【講義概要】
本講義「簿記初級」では、企業会計の基本構造を理解し、財務諸表の作成に至るプロセスをより体系的に学ぶことを目指します。必修科目である「簿記入門」で扱った仕訳処理や勘定科目の基礎を踏まえつつ、一歩進んだ商業簿記の考え方や、実務で多用される帳簿の記録方法を体系的に習得します。テキストとして『検定簿記講義/3級商業簿記〈2024年度版〉』を用い、日商簿記3級レベルの理解を定着させることをゴールとしています。まず、簿記入門で学んだ仕訳や転記の復習から始まり、売掛金・買掛金などの債権債務管理、商品売買の処理をはじめとする商取引の基本事項を整理します。現金過不足や固定資産の処理といった会計実務で頻出する論点を細かく確認し、財務諸表に与える影響もあわせて把握します。あわせて、売上原価や売上総利益など、企業の収益性を把握するための指標の計算方法を学び、会計情報を経営分析に役立てる観点を培います。中盤以降は、決算手続きに重点を移し、貸倒引当金や減価償却費などの決算整理仕訳を正確に理解・処理する方法を学びます。会計期間末には試算表だけでなく精算表も作成し、財務諸表として貸借対照表と損益計算書を完成させるプロセスを実務に即した流れで習得します。さらに、伝票会計の基礎を紹介し、小規模企業から中堅企業で用いられる伝票方式のメリットや流れを理解します。これにより、単なる仕訳処理だけでなく、様々な帳簿体系の意義や選択基準を考えるきっかけを提供します。最終的には、日商簿記3級レベルに相当する幅広い商業簿記の論点を網羅し、試験問題への対応力を身につけるだけでなく、企業実務で求められる帳簿管理や財務諸表作成の流れを一通りこなせるようになることを目指します。各回の演習やケーススタディを通じて、簿記の知識を定着させるとともに、実務における応用力を高める構成としています。学期末には総合問題を解き、理解度の確認と試験対策を行い、「簿記中級」へとつながる会計能力を養います。なお、この授業は、本学のディプロマ・ポリシー【知識・技能】のうち「情報収集・分析力、論理的思考力等の技能を身に付ける」ことを主な目的としています。
【学習到達目標】
1. 商業簿記の基本的な取引処理を理解し、仕訳・転記が正確に行える
商品売買、債権債務管理、現金・預金、固定資産などの論点を把握し、実務的な帳簿処理をこなせる基礎力を身につける。
2. 決算手続きの流れを把握し、財務諸表を完成させるスキルを習得する
決算整理仕訳・試算表・精算表の作成から財務諸表の完成までの簿記一巡の手続きを理解し、正確に遂行できる。
3. 日商簿記3級レベルの総合問題に対応できる実践力を得る
各種演習やケーススタディを通じて、基礎理論の暗記にとどまらず、応用力を身につけ、簿記中級への橋渡しとする。
【履修上の注意】
1. 簿記入門の知識を前提とした授業
仕訳や勘定科目、簡単な帳簿記入の基礎を理解していることが望ましいです。自信がない方は「簿記入門」レベルの復習を行ってください。
2. 演習問題を通じた実践重視
講義中には仕訳練習、決算整理、精算表の作成など実務的な問題を多く扱います。ノート(タブレット端末での代用可)と電卓を忘れずに持参し、細かな計算ミスにも注意しながら進めてください。
3. 毎回の学習が積み重なる科目
各回の内容が前回までの学習を前提としているため、欠席や遅刻は理解の妨げになります。やむを得ず休む場合は必ずノートや資料を確認しておきましょう。私語や規定時間以上の遅刻・途中退席等、授業態度不良者とみなした場合は失格とすることもあるので、注意してください。
【事前準備学習】
事前学習:授業で扱う範囲や勘定科目をテキストで確認し、どのような取引をどのように仕訳するかイメージしておくと理解が深まります。前回学習した範囲の復習と、本講義中に多用する会計用語(例えば貸倒引当金や減価償却など)の意味を調べておくとスムーズです。
事後学習:各回の講義後、授業内で解いた問題を再度解き直すことが大切です。特に決算整理仕訳や精算表の作成は一度の学習では混乱しやすいため、演習を繰り返し、手順を確実に覚えましょう。また、テキストや配布資料を読み返し、不明点を翌講義で質問するなど、疑問を積み残さない学習態度が求められます。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
| 教科書 | 『検定簿記ワークブック/3級商業簿記』 渡部裕亘・片山覚・北村敬子編著 中央経済社 2024年 『検定簿記ワークブック/3級商業簿記』は、試験対策と学習内容の定着を兼ね備えたワークブックです。実際の試験傾向に沿った問題が収録されており、簿記検定の時間配分や設問形式に慣れるうえでも効果的です。また、解答解説には重要論点の再整理が含まれるため、収録されている問題を繰り返し解き、定着を図ることが重要です。 |
| 参考書 | 『検定簿記講義/3級商業簿記〈2024年度版〉』 渡部裕亘・片山覚・北村敬子編著 中央経済社 2024年 『検定簿記ワークブック/3級商業簿記』は日商簿記3級合格レベルの商業簿記を網羅したテキストです。基礎的な仕訳から決算手続き、財務諸表の作成に至るまで、各論点が順序立てて解説されています。章末の確認問題や事例研究によって、実務で頻繁に遭遇する取引の処理手順を確認できます。 |
| 指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
1. 定期試験(40%)
学期末に実施する筆記試験では、日商簿記検定3級レベルの問題を中心に出題します。仕訳処理、決算整理、精算表や財務諸表の作成などを総合的に評価します。
2. 演習課題・確認テスト(40%)
講義中の演習問題や確認テストの正確性と提出状況を評価対象とします。問題を確実に解き、ミスを自分で発見・修正できるかが重要です。
3. 平常点(20%)
授業への参加態度や質疑応答への積極性などを総合的に判断します。
【講義テーマ】
| 回数 | テーマ | テーマURL |
| 1 | オリエンテーション | |
| 2 | 簿記入門の復習と商業簿記への導入 | |
| 3 | 現金・預金取引と商品売買処理の基本 | |
| 4 | 商品売買と諸掛り:仕入諸掛り・売上諸掛りの仕訳 | |
| 5 | 債権管理と貸倒引当金の基礎 | |
| 6 | 手形取引の処理:受取手形・支払手形 | |
| 7 | 固定資産の取得・売却と減価償却 | |
| 8 | 商品の期末棚卸と売上原価の算定 | |
| 9 | 帳簿組織と伝票会計:基本形の理解 | |
| 10 | 決算整理仕訳(1) 貸倒引当金、減価償却費など | |
| 11 | 決算整理仕訳(2) 見越し・繰延べと消耗品の処理 | |
| 12 | 精算表の作成と財務諸表への組替 | |
| 13 | 株式会社会計の基礎:資本金と株主資本 | |
| 14 | 総合演習(1) 基本仕訳から決算整理まで | |
| 15 | 総合演習(2) 精算表と財務諸表作成の実務 | |
| 16 | 定期試験期間 | |