名古屋学院大学シラバス


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【時間割】

学期曜日時限科目名開講期キャンパスペア単位年次教員名科目ナンバー
5限【教養】哲学春A名古屋 21横路 佳幸AN1301

【授業情報】

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講義概要

懐疑は、物事をよりよく理解する際になくてはならない心掛けである。実際、既存の理論を徹底的な検証にかける懐疑的態度は、現代科学の発展を支えてきた原動力の一つと言える。また、懐疑することがなければ、悪意ある人々の話を鵜呑みにして簡単に騙されてしまうだろう。この意味で懐疑することは、社会生活を営む上でも必須の姿勢である。
しかし他方で、懐疑は一歩間違えると社会に悪影響をもたらす要因にもなる。たとえば「地球温暖化などの気候変動は本当は人間の活動が原因ではないのではないか」とか「ワクチンを接種すると自閉症になるかもしれない」といった言説は、そうした問題ある懐疑の一例と考えられる。では、懐疑はいかなる場合に有害となるのだろうか。また、望ましい懐疑とは具体的にどのようなものだろうか。そして、懐疑的態度をどう取り込めばこの現代社会をよりよく生き抜くことができるのだろうか。
本講義では、『哲学がわかる 懐疑論:パラドクスから生き方へ』(ダンカン・プリチャード著,横路佳幸訳,岩波書店,2023年)を下敷きとして、哲学の最重要問題の一つである懐疑論(scepticism)とその周辺テーマについて考える。前半では、現代社会・政治で懐疑論が果たしている役割を解説し、「どんな根拠も疑えるため知識は不可能である」と結論づけるいわゆる過激な懐疑論的論証を考察する。後半では、科学的な営みにおける懐疑論の役割を考えるとともに、よりよい人生を送るのに必要な三つの要素として、懐疑的態度と自信、そして謙虚さがどのように関連しあっているかを検討する。
最終的に本講義では、各自が哲学における懐疑論がどのようなものであるかを理解し、現代社会や政治、科学、生き方を考える際のヒントを得ることを目指す。



【学習到達目標】

・哲学における懐疑論や社会で蔓延する懐疑論を知り、なぜそれが「問題」なのかを考えることで、哲学や社会問題に対する理解を深める。
・自分で考え抜き自ら調べることで、常識を疑う哲学的思考を身に付け、自分なりの意見や反論を表明できる。
・複雑な問題を整理し筋道立てて説明する論理的思考に親しみ、哲学以外の事柄でも丁寧な分析を行う能力を養う。



履修上の注意

この授業は、対面形式の授業を実施する。
毎回の授業に関する詳細な内容は、事前に教員からアナウンスされるので、よく確認してください。



【事前準備学習】

指定する教科書の該当箇所を読み、自分なりのメモを準備してから授業に臨んでください。授業後は、授業中に登場した議論や考えに対する疑問点や批判意見を述べるミニッツペーパーを提出してください。



【教材】

※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
  図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書『哲学がわかる 懐疑論——パラドクスから生き方へ』 ダンカン・プリチャード 岩波書店 2023年
講義は、教科書の内容に沿って進められるが、適宜資料を配布する。
参考書講義のなかで適宜紹介する。
指定図書-指定図書は、登録されていません。-

評価方法

毎回のミニッツペーパーの点数(50点)と期末試験(50点)の合計点から評価する。



【講義テーマ】

回数テーマテーマURL
1イントロダクション:哲学と懐疑論
2健全な懐疑論と過激な懐疑論
3懐疑論と相対主義(1)――デタラメとポスト真実
4懐疑論と相対主義(2)――可謬主義
5懐疑論と知識(1)――JTB
6懐疑論と知識(2)――可謬主義、再訪
7デカルト的懐疑論
8様々な懐疑論的仮説
9過激な懐疑論的論証(1)――閉包原理
10過激な懐疑論的論証(2)――知識の否定
11懐疑・科学・二枚舌
12知的な徳とよい人生
13ピュロン派懐疑論
14自信と謙虚さ(1)――相手の意見に同意できない場合
15自信と謙虚さ(2)――科学否定論と陰謀論
16定期試験期間