【講義概要】
工業文明は次々と新しい科学技術を生み出し、人類は数々の制約から解放され続けている。私たちの生活は日々便利になっているし、これからもそれが永続するように思える。今では考えられないようなことさえ、ほんの10年後には誰にでも当たり前のことになっているかもしれない。きっと、人類の未来は明るいし、希望に満ち溢れている。そのように考えるならば、普段の生活の中で、人類の活動が制約を受けるようになるかもしれない可能性について思いをめぐらせるようなことはないだろう。
しかし、人類は地球温暖化や生物多様性の喪失、資源の枯渇といったグローバルな地球環境問題に直面しており、ある人から見ればこれらは人類の存続の危機である。少なくとも、現時点ではこれらの問題を簡単に解決できる術はないし、これらの問題が原因となり、そう遠くない将来に現在の工業文明は崩壊しているかもしれない。
このような状況において、人類の存続の制約となりうる諸問題について考え、理解することは意味のあることだろう(と少なくとも私はそう思う)。本講義では、それらの諸制約について、経済学以外の学問分野をも含めた横断的な議論を行うことで、いったい何が、人類の活動の制約となりうるのかを学ぼう。
本講義と経済学部のディプロマポリシー(DP)およびカリキュラムポリシー(CP)との関連は以下のとおりである。
DP
経済社会が抱えるさまざまな課題について問題意識を持ち、経済学を基盤とした見識に基づき、問題解決に向けた論理的思考力を身につける。
CP
教養スタンダード、学科基幹、学科展開科目において身につけた知識を最大限活用し、内容の修得に努める。
【学習到達目標】
人類が経済活動をする上で直面する生態学的、物理的諸制約を理解すること。また、人類の過去の歴史から我々は何を学ぶことができるのか真摯に問うこと。
【履修上の注意】
経済理論、経済学に関する知識の他に、物理学、生態学などの理系分野の内容を含むので、その点を心得ておくこと。各回の内容は独立しているので欠席するとその回の内容が全て抜けることになる。
必要に応じて授業実施方法を変更することがあります。
【事前準備学習】
環境問題や資源・エネルギー問題に関する文献を少なくとも1冊は読むこと。高校レベルの物理、生物、化学の復習をしておくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | -教科書は、登録されていません。- |
参考書 | 『増補改訂新版 エコロジー経済学 もうひとつの経済学の歴史』 ホワン・マルチネス=アリエ 新評論 1999 『持続可能なエネルギー 「数値」でみるその可能性』 デービット・J・C・マッケイ 産業図書 2010 『文系のためのエネルギー入門』 リチャード・ムラ― 早川書房 2013 『サイエンス入門Ⅰ』 リチャード・ムラ― 楽工社 2011 『サイエンス入門Ⅱ』 リチャード・ムラ― 楽工社 2011 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | イントロダクション エコロジーとは何か | |
2 | エコロジーと倫理 | |
3 | 経済活動と地球の物理的制約 | |
4 | 物理法則 エネルギー、熱、エントロピー | |
5 | イースター文明の崩壊 | |
6 | 徳川幕府の資源管理 | |
7 | 生態学的負荷を測る | |
8 | 生物多様性はなぜ重要なのか | |
9 | 生物多様性の経済学 | |
10 | 石油の使われ方 | |
11 | 原子力発電 | |
12 | エネルギー源の選択 | |
13 | 人口、資源、経済成長 | |
14 | わたしたちの食べもの | |
15 | まとめ・総括 | |
16 | 定期試験期間 | |