【講義概要】
21世紀以降も人類が地球上で生存できるためには、地球温暖化や資源の枯渇、生物多様性の喪失といった環境問題を克服することが不可欠である。そして、さまざまなデータや証拠を照合すると、環境問題の原因は、人類の経済活動であるように思える。
本講義の目的は、大きく分けて2つある。1つには、応用経済学としての環境経済学を「理論的に」学ぶことである。特に、環境問題の発生メカニズムやその解決方法についてミクロ経済理論を用いて議論する。たとえば、共有資源の劣化や過剰利用の問題は「ゲーム理論」を用いることで、また公害や地球温暖化をはじめとする環境汚染問題は「外部性」によってその発生メカニズムを説明できる。当然のことながら、問題の発生メカニズムがわかれば、その解決方法を見つけることができる。
2つには、グローバルな観点から、これから先の人類が直面するだろう環境問題を理解することである。いわゆる先進国は経済的豊かさを享受している一方で、後発開発途上国は貧しい生活を強いられており、1日1ドルでの生活を余儀なくされている人々は10億人ともいわれる。これらの人々にも経済的豊かさを享受する権利があるはずであるが、現状のまま経済成長が続けば、地球温暖化は人類に深刻な影響を与えることが予測されている。経済成長と環境保全との間にはトレード・オフが存在するが、この関係を切り離すことはできるのだろうか。
上記の2つの目的、すなわち①環境問題の経済理論的説明、②経済成長と環境保全のトレード・オフ、およびその切り離し、に関する理解ができるよう講義を進めていく。
本講義と経済学部のディプロマポリシー(DP)およびカリキュラムポリシー(CP)との関連は以下のとおりである。
DP:経済社会が抱えるさまざまな課題について問題意識を持ち、経済学を基盤とした見識に基づき、問題解決に向けた論理的思考力を身につける。
CP:教養スタンダード、学科基幹、学科展開科目において身につけた知識を最大限活用し、内容の修得に努める。
【学習到達目標】
①環境問題の経済理論的説明、②経済成長と環境保全のトレード・オフ、およびその切り離しを理解すること。
【履修上の注意】
「環境問題」を考える講義において、私語等の教室の学習環境を乱す行為は論外であり、厳しく対処する(もちろんすべての講義において当然のことであるが、本講義では特に)。
ミクロ経済学入門、ミクロ経済学を履修済み、または並行して履修することが望ましい。
【事前準備学習】
少なくともミクロ経済学入門の内容を復習しておくこと。また、自分の関心がある環境問題に関する書籍を1冊は読んでおいてください。統計学、計量経済学、確率論についても修得しておくことが望ましい。講義後は自学自習の復習問題を解いておくこと。
必要に応じて授業実施方法を変更することがあります。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 講義では適宜レジュメ・資料を配布する。 |
参考書 | 『ゼミナール 環境経済学入門』 前田章 日本経済新聞出版社 2010 『グラフィック 環境経済学』 浅子和美ほか 新世社 2015 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
定期試験 80% 平常点 20%
平常点は出席回数ではない。ただ「出席している」だけでは、何の意味もありません。詳細については初回講義時に指示します。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | イントロダクション(講義概要、成績評価、受講上の注意点の説明) | |
2 | 環境経済学のすすめ | |
3 | 環境経済学の基礎理論-外部性と市場の失敗 | |
4 | 環境経済学の基礎理論-囚人のジレンマと共有地の悲劇 | |
5 | 環境政策手段 | |
6 | 費用便益分析 | |
7 | 貧困と環境 | |
8 | 環境クズネッツ仮説 | |
9 | 地球温暖化の経済学-科学的根拠 | |
10 | 地球温暖化の経済学-リスク評価、不確実性、緩和と適応 | |
11 | 福祉水準の測定 | |
12 | 持続可能な発展論 | |
13 | 持続可能性の計測 | |
14 | 持続可能性・世代間倫理・割引 | |
15 | 総括・まとめ | |
16 | 定期試験期間 | |