名古屋学院大学シラバス


                シラバス

シラバス 詳細

【時間割】

学期曜日時限科目名開講期キャンパスペア単位年次教員名科目ナンバー
4限【教養】日本史秋A名古屋 21上野 史朗AW1301

【授業情報】

表示する



講義概要

 徳川幕府が倒壊する前後に幕府や薩摩・長州など諸藩から侍たちが留学生としてヨーロッパに派遣された。幕末にオランダに派遣された留学生は、西欧の法制度、法思想の知識を日本に持ち帰った。これに対し明治の新政府は近代国家の建設に有用な知識・情報を獲得するため欧米諸国へ留学生を派遣した。留学生のもたらした西欧の近代知は、日本の近代化にとり極めて有益なものだった。同じ頃、日本に流入した欧米の著書は膨大なもので、それらから吸収した知識は、近代的な諸制度を築くための基礎となった。人文・社会科学、自然科学を問わず多数の海外から持ち込まれた著書の翻訳が進み、これらが明治前半の日本の開成に大いに役立った。
 新制度の設計が進むなかで、板垣退助等を中心とした民選議院設立のための運動が展開した。その際には欧米諸国からもたらされた新思想が運動の核となった。官民を問わず知識人たちによる天賦人権論、主権論などの論争が繰り広げられた。ここで行われた思想運動はいずれも近代以降の日本の思想運動のはじまりとなった。西洋の近代知を知った人々のなかからは自由民権運動などに従事した者もいたし、他方では東京大学などの官学において西洋の思想・知識を学問として教授する者もいた。いずれにせよ当該時期は官民を問わず多方面で西洋の知識を受容が活発であった。明治期の日本は欧米の最新の知識が洪水のように溢れていたのである。受容された学問内容が、ときには国家にとって不都合なものがあったので、それには当時の政府は強硬な態度をとり、場合によってその思想の担い手たちに弾圧を加えることもあった。
 このような社会のなかにあって福沢諭吉、中江兆民、加藤弘之、植木枝盛等の人々は、明治時代の前半において際立った活動をしているので、彼らの思想を当時の日本社会の動きと共に解説をしていきたい。また日本の公害問題のはじまりといわれる足尾鉱毒問題を糾弾し続けた田中正造の活動、昭和時代に有機水銀によって引き起こされた水俣病の被害者の人々に寄り添い、問題を世に問うた小説家石牟礼道子の活動についても、彼らの思想と共に学んでいきたい。



【学習到達目標】

明治維新を経た日本は、近代国家の建設をめざして種々の制度・思想を西洋から導入した。今日では当たり前にみられる民主主義、立憲主義、自由、平等といった考えも、もとをただせば西欧からの思想を受容したところから生まれたものである。本講義では私たちが日々暮らしていく上で不可欠な上記のような考え・思想が実は明治維新以降に日本にもたらされ、時間の流れとともに人々の中に浸透したものだということを認識できるようにしたい。併せてそれらにとっての障害が存在したことについても学んでいきたい。



履修上の注意

 歴史的な事柄を学ぶため、さまざまな機会を利用して歴史に関わる情報を入手してほしい。歴史書、博物館訪問、テレビ番組、映画、インターネットなどから教えられるところは多いが、インターネットからの入手情報だけが正しいと信じるような単純な考えだけはもたないでほしい。きちんと本を読むこと、史料を解釈することといった地味な学習も重要だということを知ってほしい。
 文献、史料には現在使われないような難しい漢字、語彙、表現などがあるが、少しずつでよいから理解できるようにしておくと、今後の自分の日本史の学習に大いに役に立つと思われるので、辞書などを利用して学んでほしい。
 講義期間中には5回の課題レポートがある。必ず提出すること、提出がない場合は失格となる場合がある。



【事前準備学習】

開講される迄には、江戸幕府の成立から倒壊するまでの期間に、幕府が外交・通商など諸関係を持ち続けていた国がどこで、どのような対応をしていたのかを調べておくこと。また各授業前には、CCSにアップされた教材をダウンロードして、その中に掲載された史料につき予め目を通しておくこと。



【教材】

※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
  図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書授業前日にはCCSから教材がダウンロード可能なので、授業にはデジタルデータのまま、プリントアウトしたものいずれのものでも良いので必ず持参すること。
参考書『明治思想史』 松本三之介 新曜社 1996
『自由民権運動の系譜』 稲田雅洋 吉川弘文館 2009
『近代日本の形成と西洋体験』 松沢弘陽 岩波書店 1993
『開国経験の思想史』 宮村治雄 東京大学出版会 1996
『加藤弘之の研究』 吉田曠二 新生社 1976
『通史 足尾鉱毒事件1877-1984』 東海林吉郎・菅井益郎 新曜社 1984
『水俣病闘争史』 米本浩二 河出書房新社 2022
『スペンサーと日本近代』 山下重一 お茶の水書房 1983
『田中正造』 小松裕 岩波書店 2013
『植木枝盛』 米原謙 中央公論社 1992
指定図書-指定図書は、登録されていません。-

評価方法

定期試験の結果(50点満点)と提出された課題レポート5回分の結果(合計50点)を合わせて評価対象とする。毎回授業の開始前までにCCSにアップした教材を用いて講義するため、講義内容とプリントの内容を、どこまで理解したかが、評価の対象となる。試験は論述問題なので、しっかりとした文章で書かれていないと評価しない。




【講義テーマ】

回数テーマテーマURL
1はじめに
2前近代の日本にとっての西洋
3西欧の知に遭遇し、それを伝播した洋学者たち
4西欧の知識・思想の流入
5慶応義塾と明六社の演説会
6民選議院設立をめぐる官学者と民権家の論争
7民権結社における教育と民権運動
8加藤弘之の思想とその背景
9天賦人権論・主権論争
10民権家植木枝盛の思想と実践
11革命権・抵抗権の伝播
12仏学者中江兆民と井上毅
13ハーバート・スペンサーと民権家
14足尾鉱毒問題と田中正造、谷中村滅亡
15水俣病闘争と石牟礼道子の『苦海浄土』
16定期試験期間