名古屋学院大学シラバス


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【時間割】

学期曜日時限科目名開講期キャンパスペア単位年次教員名科目ナンバー
3限【教養】日本史秋A瀬戸 21上野 史朗AW1301

【授業情報】

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講義概要

 日本史を日本国の歴史と捉えてはならない、日本で生まれ、育った人々,そして新たに日本人となった人々の歴史と考えるべきである。ひとまずいつから人々は自分が居住する地域を国として、また「日本」と意識するようになったか、自らを日本人と自覚するようになったかを確認したい。また自分を日本人であると認知される条件はどのようなものかを知る必要がある。
 近代日本を考える上で、蝦夷地が北海道となり、琉球王国が沖縄県になった経緯は必ず知っておかなければならない。日清戦争後に台湾が日本の版図に入り植民地となった。韓国の併合条約によって大韓帝国は日本の植民地となった。日本の版図に入ったそれらの地域の住民は日本人となったが、従前の日本人と呼ばれた人々との間でどのような違いがあったのかを確認したい。日本国籍を持ちながら彼らは多方面で、内地の人々と異なる扱いを国から受けたからである。
 第1次世界大戦後には日本は、敗戦国ドイツの植民地であった太平洋上の島々を国際連盟の信託を受けて統治することになった。また第2次世界大戦中には東南アジアの諸地域国々を軍事的に占領し統治した。そこでは皇民化政策が実施されたが、その「皇民化政策」と「同化政策」とはどのような違いがあるのか、検討してみたい。
 第2次世界大戦の敗戦により日本は植民地と戦争中に軍事的に占領した地域の統治権を放棄した。統治してきた地域の人々に対する戦後補償がどのようになされたのか、あるいはなされていないのかを確認したい。敗戦により日本国は連合国に占領されたが、平和条約の締結により独立を獲得したが、沖縄・小笠原は独立が遅かった。その理由は何か。また日本の植民地返還に伴い、居住者の国籍が、本人の意思とは無関係に自動的に喪失した。それによって植民地出身の旧日本兵・軍属の人々に多大な損害が生じた。それはどのようなことか、またそれへの救済は行われたのかどうかを確認したい。



【学習到達目標】

 自分を日本人だとあたりまえのように思ってきたが、実はそうではなく、様々な条件が備わって初めて自分が日本人となったのだということを学べるようにしたい。
 また過去には現在よりも広い地域に住んでいた人々も日本人であったことを学べるようにしたい。近年では世界各地からやって来た人々が新たに日本人となっていることについても認識できるようにしたい。
 



履修上の注意

 さまざまな機会を利用して歴史に関わる情報を入手してほしい。歴史書、博物館訪問、テレビ番組、映画、インターネットなどから教えられるところは多いが、インターネットからの入手情報だけが正しいと信じるような単純な考えだけはもたないでほしい。きちんと本を読むこと、史料を解釈することといった地味な学習も重要だということを知ってほしい。
 文献、史料には現在使われないような難しい漢字、語彙、表現などがあるが、少しずつでよいから理解できるようにしておくと、今後の自分の日本史の学習に大いに役に立つと思われるので、辞書などを利用して学んでほしい。
 この講義が終了するまでの期間に計5回の課題レポートが出されるので、必ず提出すること。提出がない場合は失格となる。レポートの評価(満50点)と試験評価(50点)の合計で成績が決定する。



【事前準備学習】

 開講されるまでに、江戸時代に幕府の成立から倒壊までの期間に外交・通商など諸関係を持ち続けていた国はどこであったか。そしてそれらの国々にどのような応対をしていたのかを調べておくこと。
各授業前までに、教材がCCSにアップされるので、ダウンロードして、教材の中に掲載されている史料につき予め目を通しておくこと。



【教材】

※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
  図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書CCS に教材をアップするので、デジタルデータのまま、プリントアウトするかは各自の判断に任す。
参考書『<日本人>の境界』 小熊英二 新曜社 1998
『植民地帝国日本の文化統合』 駒込武 岩波書店 1997
『沖縄の殿様』 高橋義夫 岩波新書 2015
『戸籍と国籍の近現代史』 遠藤正敬 明石書店 2013
『戦争と知識人』 北河賢三 山川出版社 2003
『近代日本とアイヌ社会』 麓慎一 山川出版社 2002
『幕末・明治期の国民国家形成と文化変容』 西川長夫 新曜社 1995
『日露戦争の世紀』 山室信一 岩波新書 2005
『ゲンダーヌ ある北方少数民族のドラマ』 田中了/D・ゲンダーヌ 徳間書店 1993
『川路聖謨とプチャーチン 今蘇える幕末の日露外交史』 匂坂ゆり 桜美林大学北東アジア総合研究所 2016
川村湊『海を渡った日本語 植民地の「国語」の時間』青土社、山川力『明治期アイヌ民族政策論』未来社、佐藤雅美『官僚川路聖謨の生涯』文春文庫、高田宏『言葉の海へ』新潮文庫、中内敏夫『軍国美談と教科書』岩波新書、上笙一郎『満蒙開拓青少年義勇軍』中公新書、鄭大均『日本(イルボン)のイメージ』中公新書、石田雄『記憶と忘却の政治学』明石書店、金誠『孫基禎―帝国日本の朝鮮人メダリスト』中公新書
指定図書-指定図書は、登録されていません。-

評価方法

定期試験の結果(50点満点)と提出された課題レポート5回分の結果(合計50点)を合わせて評価対象とする。毎回授業の開始前までにCCSにアップする教材をもとに講義するので、講義内容とプリントの内容を、どこまで理解したかが、評価の対象となる。試験は論述問題なので、しっかりとした文章で書かれていないと評価しない。




【講義テーマ】

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1「日本人とはなにか」を考える
2近代日本の成立
3琉球王国の併合
4琉球人の同化
5アイヌ・北方少数民族の同化
6日清戦争と国民意識の涵養
7誤った国民意識と差別意識の醸成
8国語の誕生と人類学
9戦勝国のおごりと多様な国民意識
10植民地の新日本人と同化政策
11国民意識の共生とその反動
12プロパガンダと教育による国民の戦意高揚
13植民地における皇民化政策
14満洲国の建国と占領地の皇民化政策
15日本の敗戦と旧日本人の処遇
16定期試験期間