【講義概要】
「刑法総論」が「どのような場合に違法と評価されるのか?」「共犯にはどのような種類があるのか?」といった、すべての犯罪に共通する問題を扱うのに対して、「刑法各論」では、「コピーは文書偽造罪における文書といえるのか?」といった各犯罪個別の問題や「他人を困らせるつもりで他人の物を持ち出して破壊した場合には窃盗罪になるのか、それとも器物損壊罪になるのか?」といった各犯罪相互の関係など、個別具体的な犯罪類型に関する問題を扱います。本講義(刑法各論2)では、刑法各論の後半部分にあたる、財産犯の後半部分(強盗罪以降)から放火罪、文書偽造罪等の社会的法益に対する罪、公務執行妨害罪等の国家的法益に対する罪までを扱います。理論的な問題に合わせて、重要判例を紹介しつつ講義を進めます。なお本講義は、法学部ディプロマポリシーのうち、「法律学における基礎的知識の体系的理解およびその応用力」を身につけることで「リーガルマインド」を涵養し、「実社会で生起する様々な法的課題を正確に理解し、解決策を考える能力」を養うことを目的としています。
【学習到達目標】
まず、個々の犯罪の成立要件及び犯罪相互の関係、重要判例について基礎的な知識を身につけることが必要です。その上で、それらを事例にあてはめて説明し、理由を付した上で自身の考えを明らかにできるようになることを目標とします。
【履修上の注意】
本講義(刑法各論2)と「刑法各論1」を併せて履修することで「刑法各論」全体を学んだことになりますので、「刑法各論1」を事前に履修するようにしてください。
また「刑法各論」では、「刑法総論」の知識を前提として必要とすることがあります。したがって、本講義を受講する前に、「刑法総論」を履修しておくことが望ましいといえるでしょう。
なお、当然のことですが、私語やスマートフォンの操作など、他の受講生の迷惑になる行為は慎んでください。注意しても改善しない場合には退室を指示することがあります。なお、この授業の出欠等の詳細な約束事は、初回授業時に説明しますので、欠席しないようにしてください。
【事前準備学習】
毎回講義の終わりに、次回の講義で扱う内容について参考書①の該当ページを指示します。予習として通読してから講義に臨むようにしてください。もちろん、その時点で内容をすべて理解する必要はまったくありませんが、よくわからなかった部分を意識しながら講義を受講することで、より理解が深まることが期待できます。
また、講義後には、配布したレジュメを復習した上で、再度参考書を読み直すことで、知識の定着を図ってください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 授業は毎回レジュメを配布して行いますが、内容は参考書①、参考書②に即しています。ただし、授業中に参考書①②をみたりするようなことを指示はしませんので、授業時に参考書①②等を持参することは必ずしも必要ではありません。 |
参考書 | 『刑法各論〔第5版〕 ※参考書①』 曽根威彦 弘文堂 2012 『刑法各論〔第2版〕 ※参考書②』 松原芳博 日本評論社 2021 『刑法を知る ※参考書③』 山内義廣編 八千代出版 2015 『刑法判例百選Ⅱ各論〔第8版〕 ※参考書④』 佐伯仁志=橋爪隆編 有斐閣 2020 『刑法各論判例インデックス〔第2版〕 ※参考書⑤』 井田良=城下裕二編 商事法務 2023 参考書②は、参考書①より判例の引用が多く、学説の議論状況も詳細に記述されています。より詳しく勉強したい人は参照してください。これに対して参考書③は、各項目見開き2頁で要点が簡潔にまとめられていますので、必要最低限な知識の確認を容易に行うことができます。参考書④と⑤は判例教材です。授業中紹介した判例について、適宜参照してください。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
学期末の定期試験(60~40%)及び、毎回授業後に実施する確認テスト(40~60%)の合計で評価します。それぞれの割合は、示した範囲内で状況に応じて適切に設定します。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 財産犯の復習、強盗罪 | |
2 | 詐欺・恐喝罪①:詐欺罪の要件 | |
3 | 詐欺・恐喝罪②:恐喝罪、権利行使と恐喝 | |
4 | 横領罪①:物の他人性、委託関係と占有 | |
5 | 横領罪②:不法原因給付と横領、横領行為 | |
6 | 背任罪:任務違背行為、財産上の損害 | |
7 | 盗品等関与罪:盗品等関与罪の本質・客体 | |
8 | 毀棄・隠匿罪:毀棄・損壊の意味、客体 | |
9 | 放火罪:現住性、既遂時期、公共の危険と認識 | |
10 | 風俗に対する罪:公然わいせつ罪、賭博罪ほか | |
11 | 文書偽造罪①:文書の意義 | |
12 | 文書偽造罪②:公文書偽造罪、私文書偽造罪 | |
13 | 公務執行妨害罪:公務と業務、職務の適法性 | |
14 | 犯人蔵匿罪・偽証罪・賄賂罪:各犯罪の基本構造 | |
15 | 全体のまとめ | |
16 | 定期試験期間 | |