名古屋学院大学シラバス


                シラバス

演習指導概要 詳細

【時間割】

学期曜日時限科目名開講期キャンパスペア単位年次教員名科目ナンバー
6限演習(4年)通年名古屋 44有薗 智美FE4101
6限演習(4年)通年名古屋 44有薗 智美FE4101

【授業情報】

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主題

ことばを通して思考を探る



指導方針概要

みなさんは、授業などで添削されて返ってきた英文原稿を見て、「なんでこの文はダメだったんだろう?」
「辞書で引いたら意味は間違えていないはずなのに、別の単語に直されてる!」と思ったことはありませんか。

本演習では、「認知言語学」の理論に基づき、日英語の言語表現を分析します。
授業で行うことは、以下の通りです。

 ① 認知言語学の考え方を理解し、まとめて発表する。
 ② 興味のある日英語の表現を、認知言語学の理論に基づき分析する
    (日英語どちらかでも良いし、二言語の対照分析でも良い)

「認知言語学」とは、言語を、人間の一般的認知能力(つまり、思考、感覚、感情)との関係で考えようとする学問です。
言い換えれば、私たち人間が、まわりで起こる物事をどう捉え、それに対してどう反応するか、ということが、言語に反映されていると考えます。
私たちを取り巻く世界の捉え方は、人間一般に共通した部分と、文化によって異なる部分があり、言語を見れば、それを話す人々の世界の捉え方の共通点や相違点が見えてきます。
日本語または英語の表現を通して、その背後に隠された「捉え方」を一緒に探りましょう。

以下、参考までに、「認知言語学」が取り組んできた、面白い疑問を挙げておきます。

例1)「夕飯できたわよー」とお母さんに呼ばれて、
 日: 今いく!
 英: I’m coming!
同じ状況で、日本語では「行く」、英語では(来るにあたる)“come”が使われているうえに、日本語では主語の「私」は省略されるのが一般的であるのに対して、英語では主語は省略しないのが一般的です。

例2)今自分がいる場所が分からなくなって、
 日: ここはどこ?
 英: Where am I?
日本語では、英語のように「私はどこ?」と聞いたら、「そこにいるじゃん」と言われてしまいますね。

二つの例のこれらの違いには、実は、共通の「捉え方の違い」が反映しています。
それは、どんなものでしょう。

例3)「甘い」と “sweet”
 日: 彼はすごく甘い。
 英: He’s so sweet.
本来、味覚を表現する「甘い」とsweetですが、人物描写に使われることがありますね。
しかし、同じような文中で使われていても、日本語の「甘い」は<厳しくない>さまを表し、英語のsweetはおおよそ<素敵な>さまを表します。
日本語では「甘い」にやや否定的な響きがあるのは、なぜでしょう。

例4)英語の前置詞inの様々な用法
 a. The ball is in the box.
 b. The party will be held in July.
 c. I’m in good mood.
 d. She’s in red.
みなさんが最初に習った前置詞inは、(a)のような、「場所」を表す用法ですね。
しかしinは、(b)「時間」、(c)「気分」、(d)「着衣」について述べる場合にも用いられます。
これができるのはなぜでしょうか。

例5) 恋愛は旅?
 a. Look how far we've come.(長い道のりだったね。)
 b. We can't turn back now.(もう引き返せない。)
 c. We're at a crossroads.(私達は岐路に立っている。)
 d. We may have to go our separate ways.(私達は別々の道を行かなければならない。)
 e. The marriage is on the rocks.(私達の結婚は暗礁に乗り上げている。)
 f. It's been a long, bumpy road.((ここに来るまで)山あり谷ありだった。)
これらの表現は、恋愛関係について述べる際に用いられる表現です。
日本語訳を見ても自然ですね。
英語でも日本語でも、「恋愛」はしばしば「旅」にたとえられます。
ではなぜ、両言語で「恋愛」が「旅」にたとえられるのでしょうか。

授業では、以上の例に見られるような、日本語あるいは英語の表現を生み出す仕組みについて、一緒に考えていきます。



【教材】

※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
  図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
テキスト『『日本語研究のための認知言語学』』 籾山洋介 研究社 2014
その他、必要な資料は適宜授業で配布。
指定図書-指定図書は、登録されていません。-

学生に対する希望事項

本演習は、ちょっとした疑問や気付きを無視せずに、しっかり掘り下げてみたい人を歓迎します。
小さな疑問を発端として、物事を突き詰めて考えることを楽しめることはすなわち、人生を楽しむ上での「強み」になります。
また、授業では、発表のハンドアウト作成法や論文(レポート)についても指導を行います。
どちらも、「自分を魅せ」ながら、「内容を効果的に伝える」という、学内外において必要なスキルです。

大学という場で学問を本気で楽しみたいと思っている熱意のある人を、心から歓迎します。

ゼミ内でしっかりコミュニケーションを取りながら信頼関係を築き、なんでも思い切り楽しみましょう。