【講義概要】
人々にある一定の行動を促そうとして決まりごとを作っても、その決まりごとを作った人(たち)の当初の思惑どおりに人々が動いてくれるとはかぎらない。すなわち、そもそも決まりごとを守ってくれない人がいたり、決まりごとを守ろうとしてあるべき本来の道筋から逸れていってしまう人がいたり、決まりごとを知ったうえでなおその裏をかいて得をしようとする人がいたりする、等々。
こういうことは、もちろん私たちの日々の生活のなかでもさまざまな場面で観察できることだとは思いますが、さまざまな実定法や判例法やその解釈のやり方がどうして今あるようなかたちになっているのか、また、そうなってきたのかを学ぶ際にもすでに織り込み済みのことなのだろうと思います。とはいえ、各種の法制度やその変遷、学説の流れを覚えることに忙しくなると、その時々の法制度のなかで人々がどのように動くことになったのか、また、どのように動いたから法制度を変更しなければならなくなったのか、といったところに目が向きにくくな(って学習が無味乾燥でつまらないものに感じられ)るということもまた事実なのかもしれません。
この講義では、社会のなかに生きる人間の心理や行動のあり方、それとの関わりで法規範がいかなる役割を果たすのか、といったところに焦点を当て、それに関する分析を学習していきます。そのことを通じて、法と人と社会との関係のあり方に対する明確なイメージを手に入れることにより、実定法の授業で学んでいる事柄を奥行きをもって理解するための手がかりを得たいと思います。
【学習到達目標】
・実定法学で学んでいる事柄の含意を法学に隣接する他の社会科学(経済学・社会学・心理学など)の視点から捉えなおすことができる。
・上記の捉えなおしを通じて、実定法の仕組みが社会のなかで果たしている、また、果たすべき役割やその働き方について、理解を深めることができる。
【履修上の注意】
社会について知るために、日頃からさまざまなニュースに興味・関心を持って接するよう心がけてください。また、人間について知るために、小説、漫画、映画、ドラマ等々、ジャンルを問わず、興味の湧く作品に積極的に触れておくことを勧めます。そこで共感や疑問等を覚える事柄があれば、それが自分の価値観を確かめるための手がかりともなると考えます。
なお、授業中の私語やスマホ操作等は慎んでください。
【事前準備学習】
【事前学習】 テキストの該当箇所にあらかじめ目を通しておいてください。
【事後学習】 配布プリント、配布資料を授業での内容をふまえて見直してください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『法と社会科学をつなぐ』 飯田高 有斐閣 2016 プリント等の資料をあわせて配布します。 |
参考書 | 適宜紹介します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
① コメントシート 10%
② レポート×2 40%
③ 定期試験 50%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | はじめに | |
2 | 人はいかにして動機づけられるのか? | |
3 | 合理的な選択とは何か? | |
4 | 人と人との相互依存的な関係 | |
5 | 人と人との協力関係の作り方 | |
6 | 調整問題とは何か? | |
7 | 法はいかにして人や社会に影響を及ぼすのか? | |
8 | 法と市場 | |
9 | 法と社会規範 | |
10 | 公平さと不合理さ | |
11 | 情報と規範 | |
12 | ものの見(え)方に宿る力 | |
13 | 法と感情 | |
14 | 法とアイデンティティー | |
15 | まとめ | |
16 | 定期試験期間 | |