【講義概要】
さて、「正義観は人それぞれだ。それぞれが自分の正義観を互いに押しつけようとするところに争いが起きるからよくない。合意に至るまで話し合いを続けるのが正しい」とか、「みんなが勝手気ままに振る舞うと他人に迷惑をかける輩もいるので、平穏な社会生活を成り立たせるべく法による強制があるのだ」というのは本当でしょうか。
ふたつがともに本当だとすると、法は不正、よくいって必要悪だということになりそうです。何かおかしい気がします(学問的には一見おかしいと思えることでもひょっとしたら本当のことかもしれないと思ってしっかり確かめることも大切なのですが)。少なくとも、みなさんがこれまで学習してきた法は、話し合いによる合意の余地が尽きたところで正しいことをもたらすべくあるのではないでしょうか。また、迷惑な輩を黙らせるのに役立つというだけなら、法を用いることはナイフを突きつけることと選ぶところがないのでしょうか。
この講義では、主に「正義とは何か?」「法とは何か?」について考えていきます。それが、みなさんがそれぞれ法に対してどのような価値観を抱いているかを自覚するきっかけにもなるでしょう。
【学習到達目標】
・法制度がその解決に携わるべき正義問題のあり方を把握する。
・主要な正義論と法概念論の概要を理解する。
【履修上の注意】
この講義では、人間が作る社会や国家、および、その社会や国家が作る人間に関する探究が主要な関心のひとつとなります。また、それらのあり方に関して異なる価値観から出てくる異なる考え方があることにも目を向けていくことになります。この点、社会や国家について知るために、日頃から社会に関するさまざまなニュースに興味・関心を持って接するよう心がけてください。また、人間について知るために、小説、漫画、映画、ドラマ等々、ジャンルを問わず、興味の湧く作品に積極的に触れておくことを勧めます。そこで共感や疑問等を覚える事柄があれば、それが自分の価値観を確かめるための手がかりともなると考えます。
なお、授業中の私語やスマホ操作等は慎んでください。
【事前準備学習】
【事前学習】 テキストの該当箇所にあらかじめ目を通しておいてください。
【事後学習】 配布プリント、配布資料を授業での内容をふまえて見直してください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『法哲学』 瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕 有斐閣 2014 プリント等の資料を配布します。 |
参考書 | 『現代法理学』 田中成明 有斐閣 2011 『現代法哲学講義 第2版』 井上達夫・編 信山社出版 2018 『法とは何か:法思想史入門 増補新版』 長谷部恭男 河出書房新社(河出ブックス) 2015 『自由の秩序―リベラリズムの法哲学講義』 井上達夫 岩波書店(岩波現代文庫) 2017 『法曹の倫理 第3版』 森際康友・編 名古屋大学出版会 2019 『問いかける法哲学』 瀧川裕英・編 法律文化社 2016 『法哲学と法哲学の対話』 安藤馨・大屋雄裕 有斐閣 2017 『法と社会科学をつなぐ』 飯田高 有斐閣 2016 『入門・倫理学』 赤林朗・児玉聡・編 勁草書房 2018 適宜紹介します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
① コメントシート 10%
② レポート×2 40%
③ 定期試験 50%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | はじめに | |
2 | 功利主義 | |
3 | 義務論 | |
4 | ジョン・ロールズの正義論 | |
5 | 自由とは何か? | |
6 | 何をもって平等なのか? | |
7 | 権利とは何か? | |
8 | 正義論の現代的な課題 | |
9 | 法とは何か?①強制 | |
10 | 法とは何か?②道徳的価値 | |
11 | 法とは何か?③権威 | |
12 | 法とは何か?④解釈 | |
13 | 批判理論 | |
14 | 遵法義務 | |
15 | まとめ | |
16 | 定期試験期間 | |