【講義概要】
この授業では、イエスの死後、弟子たちの活動によって成立していったキリスト教が、どのような歴史を歩んできたかを学びます。キリスト教は、初期の迫害期を経てローマ帝国と結びつき、古代末期から中世のヨーロッパにおいて、宗教的な面だけでなく、政治・経済・社会的な面においても支配的な存在になりました。その後、ルネサンスや宗教改革を経て、近代国家の形成過程で政教分離の原則が成立し、人間理性に絶対の信頼を置いた啓蒙主義と近代科学の洗礼を受けて「世俗化」した西欧社会は、脱キリスト教化が進みました。しかし20世紀のキリスト教は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカで発展を遂げました。現在サハラ砂漠以南のほとんどの地域ではキリスト教が多数派の宗教となっています。また、共産党政権下での迫害を耐え抜いたロシア正教は、1989年のソビエト連邦崩壊後、めざましい勢いで再生しました。今日、キリスト教人口の6割以上は「非西洋」の人々が占めています。キリスト教の中心は西洋から非西洋へと移行しました。そこではキリスト教が人々に求められ、社会の中で何らかの役割を担っているといえるでしょう。
また、日本では1980年代末から、オウム真理教が関わる一連の事件があり、世界的には、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件と、その後のアフガニスタン、イラクでの戦争、ISなど過激派の台頭が今も続いています。これらの事件の背景には、社会における個人の孤立、家族関係の困難、世界的な経済の格差と政治の関わりなど、様々な要素が関わっています。このような時代、キリスト教は、他宗教や社会との関わりの中で自らの存在意義を考えずに済ませることはできません。そのようなプロセスを経て、なお人々に届くメッセージを発信できるなら、そこには人間についての普遍的な何かを見出すことができるかもしれません。
このように、キリスト教という「定点」から人間の歴史や現代の社会をみることを通して、みなさん自身が人間や社会のあり方を捉え直し、これからの社会を生きていくためのヒントを得ていただければと思います。
【学習到達目標】
・キリスト教が成立して世界に広がっていく過程と、歴史・社会の中でどのような役割を果たしてきたのかを理解します。
・現代社会におけるキリスト教のあり方を考察し、そこから自分たちの生き方や社会に何かを活かしていけるのかどうかを探求します。
・キリスト教以外の宗教のあり方や、宗教相互、宗教と社会の関係を考察し、宗教とは何か、そのような営みをなす人間とは何かを探求します。
【履修上の注意】
・授業への積極的な参加を心がけてください。
・課題(リアクションペーパー、小テスト、小レポートなど)に取り組むときは、自分の考えを、自分の言葉で、読む人に伝わるように考えて書いてください。
・受講上の注意点、評価方法などを説明しますので、第1回目の授業には必ず出席してください。
【事前準備学習】
事前学習:CCSを通して次回の授業の概要、キーワードなどを提示しますので、それについて自分で調べて理解しておいてください。
事後学習:15回の講義が一つのつながりになっていますので、毎回の授業内容を振り返り、前後の関係・文脈の中で把握してください。その中で自分が興味をもったトピックなどについて自分で調べて理解を深めてください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『聖書(新共同訳)』 日本聖書協会 |
参考書 | -参考書は、登録されていません。- |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
平常点40%、試験60%。
平常点は課題(リアクションペーパー、小テスト、小レポートなど)の提出、試験は学期末の筆記試験(持ち込み不可)によって評価します。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 初期キリスト教 | |
2 | パウロ | |
3 | キリスト教の広がりと迫害 | |
4 | ローマ帝国とキリスト教 | |
5 | 中世ヨーロッパの形成 | |
6 | 十字軍 | |
7 | ルネサンス期の思想 | |
8 | 宗教改革 | |
9 | 近代科学とキリスト教 | |
10 | 啓蒙と革命 | |
11 | 戦争とキリスト教 | |
12 | 現代社会の潮流 | |
13 | アメリカのキリスト教 | |
14 | イスラーム世界に対して | |
15 | 現代のキリスト教 | |
16 | 定期試験期間 | |