【講義概要】
「国際関係論」とは何か。
国際関係論を、国際政治学(国際政治史を含む)と同一の内容をもつ政治学の一部と考える立場(アメリカなど)と、より広く国際政治学とともに国際経済学、国際法学、地域研究など、いわば国際と名のつく学問を総合的にとらえようとする立場(日本の場合)とがあります。
尤も、「国際関係」ということば自体は同義語の反復で、日本語の「国際」ということばにすでに「諸国間の関係」(「際」)という意味があり、さらに言えば、「国際関係学」ではなく「国際関係論」という名が用いられている事も、この学問の未熟さを物語っています。「国際学」などという語も用いられていた事があり、1970年代に上智大学国際関係研究所のグループによって試みられた事がありましたが、あまり一般化してはいません。
30年ほど前までは、国際関係論の方法的研究に意欲的なのはアメリカの学界で、実証的研究と並んで理論的研究も盛んに行われていました。しかし、そこに提唱される理論の多くは、国際関係のなかのきわめて限られたテーマに関する「部分理論」であり、巨大な国際関係の現実を総括しうる「全体理論」ではありませんでした。できる限りの事象を説明し尽くそうという情熱は、そもそもの国際関係論に欠けるところでした。逆に、国際関係の現実は、いよいよ諸学の総合による解明を必要としています。国際関係論は、日本にあっては輸入学問という色彩が濃いとはいえ、例えば、平和に貢献するという目的意識の明確な平和研究の方向などに、研究の前途をみいだす立場が有力となりつつあります(cf.日本大百科全書)。
本講義では、学問としての国際関係論への導入部分として、日常のさまざまな「国際報道」を通じて、世界で何が起こっているのか、持続的関心を向け、考えてもらう手掛かりを提供するつもりです。
なお、本講義は、本学のディプロマポリシーである人間、社会、文化、自然等に対する幅広い知識を身に付け、豊かな国際感覚を整え、社会の発展に貢献できることを目指しています。
【学習到達目標】
世界の成り立ちと趨勢の相関関係をよく認識し、新聞、ニュース番組等の内容を、時間的にも空間的にも、より深く理解できるようになる事が、本講義の到達目標です。
【履修上の注意】
まず、提供された資料をよく理解する事に努め、講義内容を聞きながら、ジャーナリストになったような心持ちで、自らノートをきちんととれるようになっておく事が肝心です。
【事前準備学習】
日頃からニュース(マスメディアばかりではなく、SNSやネットなどでのそれも)に敏感に反応できるようになっておきましょう。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『コロナ禍後の世界ー〈人類運命共同体〉の岐路』 鈴木規夫 国際書院 近刊 『私たちはどんな世界を生きているか』 西谷修 講談社現代新書 2020 『コロナ禍後の世界ー〈人類運命共同体〉の岐路』(仮題)は2021年6月頃の発刊予定ですので、上梓されましたら、また改めてお知らせします。 |
参考書 | 『 オリエンタリズム』 エドワード・W. サイード 平凡社 1993 『危機の二十年――理想と現実』 E.H.カー 岩波文庫 2011 『現代国際関係史: 1945年から21世紀初頭まで』 有賀 貞 東京大学出版会 2019 その他、必要に応じて講義中に参考文献を指示します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
試験70% 平常点30%(出席および小レポートの評価) 但し、コロナ禍の状況に応じて臨機応変に対応します。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | はじめに | |
2 | 国際関係論と国際主義 | |
3 | 国際関係における権力とは何か | |
4 | 帝国主義の時代と軍事力 | |
5 | 創られた人種 | |
6 | 戦争の世紀 | |
7 | アジア主義とは何か | |
8 | アジアの知識人たち | |
9 | アメリカのソフト・パワーと戦後の日本 | |
10 | ジョン・ダワーの警告ー現代における戦争 | |
11 | 社会主義の世紀として20世紀と21世紀の社会主義Ⅰ | |
12 | 社会主義の世紀として20世紀と21世紀の社会主義Ⅱ | |
13 | 国際関係におけるインテリジェンスⅠ | |
14 | 国際関係におけるインテリジェンスⅡ | |
15 | 「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい」 | |
16 | 定期試験期間 | |