【講義概要】
心と身体の関係は素朴な感覚の問題として見る限り、ただ具体的な相関関係を知れば充分と思われるかもしれません。しかし、その「関係そのもの」を理論的に考えようとすると、解きがたい難問にぶつかります。その意味において、心の存在は(したがって心身関係は)人類最大の謎なのです。心についての近世以降の哲学の歴史はその難問に答えようと苦闘した歴史とも言えます。
この授業の前半では、心身関係の具体的事例を考察する「前の」、そこにある理論的な問題を《哲学的に》考えていきます。心身のとらえ方がむしろものの見方に依拠していることを理解していただきたいと思います。具体的には、デカルトの心身二元論の成り立ちやその後の哲学史上の問題、現代科学・現代哲学における心身関係のとらえ方を紹介します。
後半では、「謎である」ことを踏まえたうえで、私たちの心の仕組みについての一つのモデルを考えていきたいと思います。そこでの焦点は、心と身体記憶の関係、時間と空間という枠組み、それと心の複数性と一性の関係です。
本講義は、本学のディプロマ・ポリシー(全学)のうち、「人間、社会、文化、自然等に関する幅広い知識を身につける」こと、「論理的思考力等の技能を身につける」こと、それらを通して「思考力・判断力」を涵養することを目指します。また毎回レポートを書いてもらいますので、「表現力」の養成ともなるでしょう。
【学習到達目標】
心身関係の理論的困難を理解できるようにし、関係諸学問の学習の基礎を形成することを目標とします。
【履修上の注意】
この授業は、CCSを活用した基本型授業(教材提示・課題提出)です。ただし、授業時間帯に任意参加でアプリケーションによるTV会議システム(Teams)を使用した質疑応答もおこないます。
【事前準備学習】
CCSで事前に配布されたプリントと解説(パワーポイント)で学習し、授業日深夜までに課題レポートを提出して下さい。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 必要なものはすべてプリントやその解説で配付します。 |
参考書 | 哲学者・心理学者の文献については授業中に適宜紹介します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
毎回、授業内容のレポートを提出してもらいます。各回のレポートの出来を点数化し、その合計に学期最後の最終レポートの点数を加算して評価します。欠席(レポート提出なし)6回で失格とします。
各回のレポートの点数は一回の授業ごとにCCSでお伝えします。細部については第1回授業で説明します。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 成績評価方法、「見ること」について | |
2 | 「見ること」と言葉・知識 | |
3 | 「見方」の多様性...心の多様性の基礎 | |
4 | 科学と心/「色」は物体の性質ではない | |
5 | 科学と心身二元論、心身問題 | |
6 | 現代の脳研究とは何か | |
7 | 心の仕組み/身体記憶について | |
8 | 意識と行動、その時間・空間 | |
9 | 無意識の広がり | |
10 | 心の複数性と一性 | |
11 | 理性と感情 | |
12 | 心の変化の仕組み/脳のストックとその変化 | |
13 | 社会の変化と心 | |
14 | 脳の変化と心 | |
15 | 最終レポート | |
16 | 定期試験期間 | |