【講義概要】
現代は、「グローバル化の時代」とよく言われます。確かに、モノ(商品貿易)、お金(資本移動)、ヒト(海外留学・国際ビジネス・労働移民)、企業(外資企業・直接投資)が国境を当たり前のように越える時代に皆さんは生きています。この講義ではそういった国境を越える経済活動を理解するための学問である「国際経済学(International Economics)」の入門として,最低限必要な事項を幅広く説明します.
「国際経済学」はヒト,モノ,カネの国際的な流れに注目した学問です。
皆さんは、毎日読む新聞記事にこうした問題をどれくらい見つける事ができるでしょう.またどんな国際経済問題に興味を覚えますか?
国際経済学で扱うべき主要な問題(分野)をいくつかに類型化するならば,
(1)自由な交換・取引(貿易)からの利益は?
(2)貿易パターン(何をどこの国が輸出するか)は何によって決まるのか?
(3)保護主義と貿易政策の効果 (輸入品に負けてしまいそうな産業は保護すべきか?)
(4)国際収支の決まり方と不均衡 (貿易黒字はよいことで貿易赤字は悪いこと?)
(5)為替相場の制度と為替レートの決定 (どんなときに円高 or 円安になるの?)
(6)財政金融政策,国際政策協調 (G7, G20ってどんな役割を果たしているのか?)
(7)国際的な資本の流れ (資金・資本は国境を越えてどの方向に流れるのか?)
のようにまとめられるでしょう.
これらの問題を扱う為に,国際経済学には2つのアプローチ:
・財やサービスの実物取引を扱う,国際貿易理論
・資本取引を含む対外マクロ経済を扱う,国際マクロ(金融)理論
が用意されています.
この講義では,とりわけ上記の2つの理論の対象または前提となるような,現実の経済を詳細な例を題材にして眺めます.
【学習到達目標】
以下にあるように国際経済については誤解や誤った風説が流布している。受講者には、このような誤解を正すような国際経済の正確な知識と直感を修得してもらうことが目標である.
<よくある国際経済の誤解の例>
1.自由貿易により国内経済は打撃を受けてしまう(?)
2.輸出が増えると良くて,輸入が増えると悪い(?)
3.貿易黒字があれば経済は豊かさを維持できる(?)
これらの誤解を解く為には,1.比較優位の概念,2.貿易制限の効果,3.国際収支の3点セットを理解する必要がある.
【履修上の注意】
1.授業中の私語に対しては厳格な態度で注意する.
2.説明を聞かず,ノートを取らず,出席目的だけの学生は単位が取れない.
3.CCSの機能(Minute paper,教材ダウンロードなど)を頻繁に利用する。
4.履修前提科目: 「ミクロ経済学入門」,「マクロ経済学入門」を履修していることを前提に講義を進めます.
5.並行履修推奨科目: 「ミクロ経済学1」, 「マクロ経済学1」, 「金融論入門」, 「経済政策論(3年次以降)」, 「国際経済学(3年次以降)」を併せて履修することを薦めます。
6.現実の国際経済から目を離さない為にも、毎日、新聞を読み,現実の経済問題と講義で学んだ国際経済学の見方との関係について考えること.
【事前準備学習】
1年次に履修した 「ミクロ経済学入門」,「マクロ経済学入門」の内容をしっかり復習してから授業に臨むこと.
特に、「需要と供給の図」「消費者余剰と生産者余剰」「GDP(国内総生産)とGNI(国民総所得およびその構成」などの基礎概念をこの講義で頻繁に活用するので、事前の復習が必要である。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 学習ガイドとして表記の参考書を推薦する予定であるが,普段の講義におけるパワーポイントのスライド・コピーも教科書代わりに配布する。 |
参考書 | 『国際経済学をつかむ(第2版)』 石川城太,菊池徹,椋寛 有斐閣 2013 『サクッとわかる図解国際経済のしくみ』 清野一治監修 PHP文庫 2005 『ゼミナール国際経済入門 改訂第3版』 伊藤元重 日本経済新聞社 2005 『基礎コース 国際経済学』 澤田康幸 新世社 2004 『入門・国際経済学』 石井安憲,清野一治他 有斐閣 1999 『コンパクト国際経済学』 多和田真 新世社 2010 講義開始時点でリーディングリストを配布する。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
期末試験(持込不可)成績50%,平常点(Minute Paper提出などに基づく)50%、以上の合計で評価する。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | イントロダクション:講義ガイダンス,国際経済学の考え方 | |
2 | [I] (International Trade)---国際収支表(対外取引の見方) | |
3 | --- なぜ各国は貿易するのだろうか?(貿易の利益) | |
4 | --- 貿易を決定する基礎原理:比較優位とはどのような概念か? | |
5 | --- 比較優位の決定要因:貿易と生産要素賦存(ヘクシャー・オリーン定理) | |
6 | --- 世界貿易量の増加とグローバル・サプライ・チェーンの形成 | |
7 | --- グローバル化と国際貿易の歴史(自由貿易への道のり) | |
8 | [II] (Trading System)--- 戦後国際貿易体制の変遷 | |
9 | --- 自由貿易体制: GATT/WTO の仕組みとルール | |
10 | --- 貿易をコントロールする手段:貿易政策の種類と内容 | |
11 | --- 地域貿易協定と新しい問題:対外投資,知的所有権,サービス取引 | |
12 | [III] (Currency System)--- 戦後国際通貨体制の変遷 | |
13 | --- 国際収支と国民所得概念:経常収支の黒字と赤字は何を意味するのか? | |
14 | --- 外国為替市場と為替レート | |
15 | スペシャル・トピックス(グローバル化と感染症) | |
16 | 定期試験期間 | |