【講義概要】
キリスト教倫理は、基本的に聖書や教会伝統からその倫理的判断の根拠を求めるものとして、キリスト教世界で形成された宗教的倫理観のことを指す。そういう意味で一般倫理と明確に区分がつく。しかしながら簡単に定義できない複雑なものでもある。というのも、同じ聖書の中に表れる旧約聖書的倫理と新約聖書的倫理が少し異なり、また同じキリスト教会のカテゴリーに含まれるカトリック教会とプロテスタント教会の倫理的判断には微妙な違いが存在するからである。そして、同じプロテスタント教派の中にも現代的倫理問題に対する異なる受け止め方や解釈が存在し、場合によっては真逆の判断が下されることもあるからである。実はここにキリスト教倫理を学ぶ面白さがあるのである。さらにこの学びは、進化生物学、脳科学、犯罪心理学、政治倫理学、神学など学際的側面を考慮しつつ、価値多元化社会における倫理的諸難問を幅広く見つめ、より深く理解しようとする試みであるため、一般教養の涵養にもつながるであろう。本講義の構成として、全体の約三分の一は一般倫理とキリスト教倫理の基本的な意味について学び、残り三分の二は現代の倫理的問題または倫理的問題につながりそうな事柄を取り上げる。
【学習到達目標】
1.キリスト教倫理と一般倫理の違いを学ぶ。
2.その違いから、キリスト教的倫理の意味をより明確にする。
3.キリスト教的倫理観を通して、現代の複雑な道徳的諸問題について批判的に考える。
4.そうすることによって、倫理的により深く判断できる素養を身につける。
【履修上の注意】
毎回の講義内容をまとめ、自分の意見や感想をノートすることが特に評価につながる。
【事前準備学習】
キリスト教の必修科目から学んだ知識を復習すること。
そして新聞やニュースを通して知った現代の倫理的諸問題について考える習慣を身につけるように努力すること。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『聖書 新共同訳』 日本聖書協会
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参考書 | 『キリスト教倫理入門』 金子晴勇 教文館 1990 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
平常点50%・定期試験(筆記)50%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | オリエンテーション、様々な倫理観 | |
2 | 六つの倫理体系 | |
3 | キリスト教倫理①:定義 | |
4 | キリスト教倫理②:聖書的根拠 | |
5 | キリスト教倫理③:状況倫理の問題 | |
6 | 嘘 | |
7 | 性問題 | |
8 | お酒・たばこ・危険な薬物 | |
9 | 殺人 | |
10 | ジェノサイド | |
11 | サイコパス | |
12 | 犯罪と脳 | |
13 | 進化論と倫理 | |
14 | 自然環境破壊 | |
15 | キリスト教倫理④:内村鑑三の場合 | |
16 | 定期試験期間 | |