【講義概要】
本科目では、中級レベルのミクロ経済理論のうち、「ゲーム理論を用いた分析」・「情報の経済学」・「独占市場」という3つのトピックを取り上げ、それぞれ講義します。
これらのうち、「情報の経済学」と「独占市場」の2つに共通しているのは、「ミクロ経済学入門」の授業で学んだ「完全競争市場の仮定」が成り立たない場合を対象にしたものであるということです。例えば、「独占市場」はある財を生産する企業が一社しか存在しない市場を指し、「市場には無数の企業が存在する」ことを仮定する完全競争市場とは、企業自身の行動や社会全体の利益の大きさについて大きく異なる結論が得られます。一方、「ゲーム理論」は正確には数学の一分野ですが、ミクロ経済学の「完全競争市場の仮定が成り立たないケース」の分析には特に力を発揮するものです。本科目で扱うのは入門程度の内容ですが、ミクロ経済学やその他の関連科目を学ぶ上では十分に役立つでしょう。
「ミクロ経済学1」と同じく、数式ではなく図の使用を中心とした、できるだけ丁寧な説明を心掛けたいと思っています。ただし、内容はやはり「入門」よりも高度になっていますので、本科目を修めるには受講者自身の努力が不可欠です。なお、各回の講義の最後には問題演習を行い、理解の確認を行う予定です。
本学部のディプロマ・ポリシーおよびカリキュラムポリシーとの関係:
ミクロ経済学は、経済学における専門知識・分析ツールの中でも特に基礎的なものと言えます。また、「費用・便益」の考え方を軸とした極めて論理的な方法によって、経済問題の中の様々な因果関係を明らかにします。さらに、ミクロ経済理論を現実に応用するためには、現実の経済社会が抱える様々な課題に対して関心と問題意識をもち、時には政治や法律などの観点から、経済社会を多面的に捉えることが必要になります。
【学習到達目標】
①ゲーム理論の基礎的な概念・用語、および経済分析への応用例を理解し、その内容を自ら説明できる。
②各種の「情報の非対称性」と、それに応じた市場の非効率性を理解し、その内容を自ら説明できる。
③独占企業の行動に関するミクロ経済学的な説明を理解し、その内容を(図や式を適宜用いながら)説明できる。
【履修上の注意】
1.「独占市場の理論」については、「ミクロ経済学1」または「ミクロ経済学」の内容を前提とします。講義においても復習の時間を設ける予定ですが、可能であれば、完全競争市場における生産者行動について、各自で復習してください。
2.座席指定とする予定です。
3.講義中の私語は慎むこと。注意しても改善が見られない場合には平常点を大幅に減じます。
【事前準備学習】
受講前(2回目以降):前回の講義資料にもう一度目を通し、重要な概念や語句を復習しておいてください。
受講後:その回の内容を自分で整理・復習し、重要な概念や語句をなるべく暗記してください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 教科書は特に使用せず、講義の内容を要約した資料を毎回配布する予定です。 |
参考書 | 『今までで一番やさしいミクロ経済学』 小暮 太一 マトマ出版 2012年 『ゲーム理論の思考法』 川西 諭 中経出版 2009年 『ミクロ経済学の力』 神取 道宏 日本評論社 2014年 『入門ゲーム理論と情報の経済学』 神戸 伸輔 日本評論社 2004年 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
・期末試験の得点:70%
・平常点:30%
平常点については、主に、授業後に実施する演習問題への正解・不正解の状況から評価します。
翌週の授業の冒頭で、問題の解答・解説をフィードバックとして行います。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | ゲーム理論による分析①「ゲーム理論」とは | |
2 | ゲーム理論による分析②囚人のジレンマゲーム | |
3 | ゲーム理論による分析③経済問題における「ジレンマ」 | |
4 | ゲーム理論による分析④支配される戦略の逐次消去 | |
5 | ゲーム理論による分析⑤ナッシュ均衡 | |
6 | ゲーム理論による分析⑥ナッシュ均衡による分析例 | |
7 | ゲーム理論による分析⑦混合戦略ナッシュ均衡 | |
8 | ゲーム理論による分析⑧逐次手番ゲーム再論 | |
9 | 情報の経済学入門①逆選択 | |
10 | 情報の経済学入門②シグナリングとスクリーニング | |
11 | 情報の経済学入門③モラル・ハザード | |
12 | 独占市場の理論①完全競争市場における生産者行動(復習) | |
13 | 独占市場の理論②独占企業による価格と生産量の決定 | |
14 | 独占市場の理論③独占の非効率性 | |
15 | 14回までの内容の復習 | |
16 | 定期試験期間 | |