【講義概要】
財政とは、国家あるいは政府の歳入・歳出活動をいう。歳入活動としては、租税徴収、貨幣発行、罰金徴収、手数料徴収、公企業収入などがあり、歳出活動としては、政府消費、政府投資、移転支出、補助金などがある。政府はこれらの政策手段を用いて、資源の効率的配分、所得分配の公平性、経済の安定という三つの目標を達成しなければならないといわれている。政府の政策手段と政策目標の間には、手段と目標の最適な組み合わせ、手段の非有効性、目標設定といった問題が存在する。財政学はこのような問題の解答を探す学問分野である。
本講義では、最初にわが国の財政制度と財政の現状および1980年代以降のわが国の財政の歩みについて概観する。次いで、公共財と呼ばれるサービス、すなわち市場を通じて民間企業では供給することが困難で、政府や地方自治体が租税などの公的資金を用いて提供することが求められるサービスについて、それらがなぜ市場で供給することができないのか、またそれらのサービスの最適な供給のための条件について説明する。次に税について取り上げ、税の仕組みやその役割について説明した上で、応益原則や応能原則といった望ましい課税制度に求められる条件について説明する。その上で、所得税と法人税、資産課税について、理論的説明とともに、政策的観点からの解説を行う。最後に、公的年金制度などの社会保障制度を中心に、財政を通じた世代間資源配分ならびに所得分配の問題についても解説する。
この授業は、経済学部のディプロマ・ポリシー【知識・技能】のうち「経済社会が抱える様々な課題に対する関心と問題意識を持つことができる」ことを目的としている。
【学習到達目標】
・財政の役割と、日本の財政制度の大枠を理解する。
・わが国の財政の現状と、1980年代以降のわが国の財政政策の歴史について理解する。
・公共財の性質について理解し、その最適供給の条件を、市場を通じて供給される私的財の場合と対比して理解する。
・望ましい税制に求められる課税原則を理解し、それぞれの課税原則とそれを満足する税の種類を対応させることができる。
・積み立て方式年金と賦課方式の年金の制度的特徴を理解し、それらの年金制度と世代間所得分配との関係を理解する。
【履修上の注意】
・1年次のミクロ経済学入門とマクロ経済学入門の理解を前提とする。
・静穏な授業環境を維持するために座席を指定する。指定された席に着席すること。
・授業の説明で用いるPower Point のスライド資料をCCS上にアップロードして受講者の便宜を図っている。CCSにアップするPower Point 資料をダウンロードして、該当部分をプリントアウトしたものを授業時に持参すること。
・毎回授業中に当日の授業内容に関する問題を出すので、授業後、CCSのMinutePaperで解答を提出させる。
フィードバックとして、前回出題した問題の解答を次回の授業の開始時に説明を行う。
・さらに、MInite Paper の問題とは別に、その日の授業の復習問題を出題して、授業の中で出席者に解答してもらう。
【事前準備学習】
1年次のミクロ経済学入門、マクロ経済学入門の授業内容を十分復習して、授業内容の理解ができるように準備する。
授業中に出題した問題の解答を、決められた期限までにCCSの Minute Paper にて提出する。
前回の授業で説明した内容について、CCSにアップするPower Point のスライドで復習をしておく。
次回の講義の学習範囲についても、CCSにアップしたPower Pointのスライドをあらかじめ目を通しておく。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 教科書は使用しない。 |
参考書 | 『入門財政学』 土居 丈朗 日本評論社 2017 『財政学をつかむ 【新版】』 畑農 鋭矢・林 正義・吉田 浩 有斐閣 2016 『財政のエッセンス (有斐閣ストゥディア)』 西村 幸浩/宮崎 智視 有斐閣 2015 『コア・テキスト 財政学 第2版』 小塩 隆士 新世社 2016 『日本の財政をどう立て直すか』 土居 丈朗(編) 日本経済新聞出版社 2012 |
指定図書 | 『財政学をつかむ(Textbooks tsukamu)』 畑農鋭矢, 林正義, 吉田浩著 有斐閣 2008.6 『日本の地方財政』 神野直彦, 小西砂千夫著 有斐閣 2014.10 『Basic地方財政論』 重森曉, 植田和弘編 有斐閣 2013.4 『日本の財政をどう立て直すか』 土居丈朗編 日本経済新聞出版社 2012.2 『コア・テキスト財政学 第2版』 小塩隆士著 新世社 2016.3 『財政学 第4版 (新経済学ライブラリ:7)』 井堀利宏著 新世社/サイエンス社 (発売) 2013.3 |
【評価方法】
期末試験 70%
平常点(課題の提出・授業態度) 30%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | プロローグ: 授業予定、授業方針の説明 他 | |
2 | 日本の財政の現状 | |
3 | 国民負担率 | |
4 | 戦後日本の財政運営 | |
5 | 公共財の性質 | |
6 | リンダール・メカニズム | |
7 | 地方公共財と国家公共財 | |
8 | 日本の税制度 | |
9 | 租税の帰着 | |
10 | 課税原則 | |
11 | 所得税と消費税 | |
12 | 資本所得課税における諸問題 | |
13 | わが国の社会補償制度 | |
14 | 公的年金を巡る諸問題 | |
15 | 授業の総括と復習 | |
16 | 試験期間 | |