【講義概要】
日本経済史においては、国家・政府と経済・企業との関係が焦点となっている。歴史的には絶対主義期の重商主義政策の背景には進行する産業革命という課題があり、自由主義段階では工業化諸国間の競争、支配と従属という問題があり、帝国主義の時代は一転して植民地・市場の獲得競争とビッグビジネスの成立と国際競争に彩られた。第一次世界大戦、第二次世界大戦は、政府による景気政策、軍事スペンディングが市場経済を圧倒することを提示する。
第二次大戦後は、アメリカの軍事的経済的な優位を前提とした自由貿易体制とケインズ的な政策が世界を席巻する。
政治の時代から経済の時代へと転換する。いまや、企業間競争が唯一の市場経済規範となった如くである。
以上の、歴史過程を日本の経済的な歩みを軸に考えていきたい。日本型の企業経営の原型は、明治期の企業経営にあった。明治期の代表的な形態である国家資本型および財閥資本型をとりあげる。その発展要因として、対外的な軍事的対応に起因する政府の産業政策の先導性、そして企業経営レベルにおける外国企業の情報・技術・資本への依存性をとりあげ、戦前期を通して、企業経営の発展の支柱であったことを明らかにしたい。併せて、戦後日本資本主義の発展過程とその歴史的な条件と比較しつつ解明したい。
【学習到達目標】
日本の工業化が可能となった諸条件について習得し、説明できることが目標。併せて、日本資本主義の構造が如何なる条件によって形作られたのかについても、戦後と比較しつつ理解すること。併せて、現下の経済問題などにも随時触れていくので、皆さんが「現代との緊張関係をもって日々過ごす」ための機会となること。
【履修上の注意】
講義については、常に、疑問をもって、聴くこと。毎回の小テストは皆さんの講義の理解だけでなく、事実の見方をどのように受け止めたのかを、「教員が知り、次回の講義の参考にするためのものです」ので、真剣に取り組んでいただきたい。
【事前準備学習】
前回の範囲をノート、配布したプリントをもとに確認し、必要な場合には、参考文献にもあたって、理解を深めるとともに、シラバスの次回分を確認し、参考文献などで、事前に概要をつかむようにすること。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | -教科書は、登録されていません。- |
参考書 | 『日本経済史 近世ー現代』 杉山伸也 岩波書店 2012 『日本経済史 第2版』 石井寛治 東京大学出版会 1991 講義内容は参考書のデータや視点を踏まえたものとなっています。 |
指定図書 | 『産業革命と企業経営: 1882〜1914 』 阿部武司, 中村尚史編著 ミネルヴァ書房 2010.2 『ものづくり日本経営史 : 江戸時代から現代まで 』 粕谷誠著 名古屋大学出版会 2012.11 『二一世紀の世界へ : 日本と世界 : 16世紀以後 』 歴史学研究会編 岩波書店 2013.4 |
【評価方法】
毎回の小テストと期末の試験の結果から評価
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 現代日本経済史の問題領域ー政府と市場・企業ー | |
2 | 富国強兵・殖産興業と明治維新政府の工業化構想 | |
3 | 松方財政期の工業化と軍国設計 | |
4 | 日清戦後経営と経済構想 | |
5 | 日清・日露戦争と産業革命 | |
6 | 産業革命期の資本類型と政府 | |
7 | 第一次大戦と日本経済 | |
8 | 国家総力戦の経済的意義ー軍需工業動員構想 | |
9 | 産業政策と企業間競争ー自動車分野ー | |
10 | 産業政策と企業間競争ー航空機分野ー | |
11 | 戦時経済と企業 | |
12 | 戦時経済と重化学工業化 | |
13 | 戦後改革の構想と現実 | |
14 | 日本経済の長期的高成長と企業間競争 | |
15 | 企業間競争の国際化 | |
16 | 定期試験期間 | |