【講義概要】
地誌学は地域地理学とも呼ばれる。地球上のある特定の地域をとりあげ,そこで行われている社会,経済,文化,政治などの人間活動を空間的視点から総合的に考える学問である。なぜ総合的に考えるかといえば,それは人間活動は元々,多面的な属性をもつ個人や集団によって行われているからである。たとえ経済活動といえども,社会や文化の要素を欠いたままでは成り立たない。政治的規制や支援なども経済活動に影響を与える。こうした多面的要素をもつ人間活動を,自然や環境などにも目を配りながら考える点に人文地理学の特徴があり,とくに限られた地域を対象として研究を行う地域地理学においては,総合性が重視される。今回,取り上げる地域は名古屋圏である。この圏域は,名古屋市を中心として,先に述べた社会,経済,文化,政治などの人間活動が総合的に展開されている地域である。現在でこそこの圏域の中心は名古屋であるが,歴史的に考えた場合,名古屋が地域の中心になる以前は,一宮,岡崎,四日市などに局地的な中心があった。17世紀以降,尾張藩の居城として名古屋に町が誕生し,それ以降,数世紀をかけて周辺地域を影響下におくようになった。とくに第二次世界大戦以後,工業化やモータリゼーションの進展とともに都市圏,大都市圏という歴史的に経験しなかった広域的な経済圏,社会圏が形成されていった。その最大の中心が名古屋であり,いつしか名古屋圏という名前が定着していった。講義では,名古屋圏と呼ばれている地理的範囲の成り立ち,その歴史,現状などを多くの図的資料を手掛かりとして考える。この講義を受けることで,普段,名古屋圏の中で生活していながら,あまり知らない地元の歴史,産業,自然などについて理解を深めることができる。
【学習到達目標】
地誌学は人文地理学の一部を構成するが,基本的には地域地理学であり,一般地理学での研究成果を都市という地域を対象として総合的に結び合わせたものである。それゆえ,都市という地域に限定してはいるが,地理学一般の考え方や概念を取り入れながら考察している点に総合性がある。こうした総合性が理解できる能力を習得することが,この科目の学習到達目標である。
【履修上の注意】
テキストを使用するので,必ず手に入れて講義にのぞむこと。
【事前準備学習】
テキストを事前によく読んでおくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『名古屋圏の都市地理学』 林 上 風媒社 2016 |
参考書 | 『都市サービス空間の地理学』 林 上 原書房 2015 『都市と経済の地理学』 林 上 原書房 2014 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 名古屋圏の舞台としての地形環境 | |
2 | 地形環境への適応と治山・治水の取り組み | |
3 | 位置の条件と地域相互関係の条件 | |
4 | 古代,中世の集落,街道,地域中心,交通都市 | |
5 | 近代の鉄道事業と自動車交通,港湾・運河の建設 | |
6 | 陶磁器業,紡績業などの近代化と工作機械の発展 | |
7 | 木材工業,電気事業,鉄鋼業,軍需工業の展開 | |
8 | 戦後の都市基盤の復興と生産基盤の整備 | |
9 | 鉄道網・高速道路網の拡充と港湾・空港の役割 | |
10 | 用水事業,地盤沈下・河口堰問題,電気・ガスの供給 | |
11 | 戦後の工業化と臨海部,内陸部の工業用地 | |
12 | 石油ショック後の産業高度化と地域経済の変貌 | |
13 | 支店経済と製造業集積の両面をそなえた大都市圏 | |
14 | 大都市圏周辺地域における産業振興と都市化 | |
15 | 商業の歴史的発展と戦後の小売業・卸売業の変化 | |
16 | 定期試験期間 | |