【講義概要】
港湾は,水上交通を利用してモノや人を輸送する舟や船舶が立ち寄って積み降ろしをする場所である。港湾の歴史は古く,世界各地に分布してきた。モノや人の積み降ろしに携わる人々が集まって生活するようになり,次第に集落が形成されていった。集落は都市にまで発展し,その中から大都市が誕生していくこともあった。こうした都市が規模を拡大していったのは,港湾の背後で生産地域が広がっていったり,背後圏の人口が増えていったりしたからである。港湾は背後で生産されたモノを送り出したり,背後圏人口が需要するモノを取り次いだりした。時代とともに港湾とその背後圏は大きくなり,モノの送り出し先や取り入れ先の範囲も広がっていった。講義では,港湾と都市に焦点を当て,両者の関係が時代を追うごとに変化していった様子を述べる。一般には港湾と呼ばれるが,港,湊,ポート,ハーバーなど,港湾をさす言葉は多くある。これは,港湾が河川,海洋,湖,湾,三角州,三角江など自然の特徴を活かしながら,いろいろなかたちで利用されてきたからである。産業革命に始まる近代以降は港湾の建設技術が大いに発展し,規模の大きな港湾が誕生していった。それにともない,背後圏での産業発展や都市人口の増大が進み,港湾と都市の結びつきは一層強まった。第二次世界大戦後は船舶の大型化やコンテナ船の登場など物流の分野で大きな進歩があり,今日のグローバル化へとつながっていった。自然環境と人間がいかに関係しあってきたかを知る素材として,都市と港湾の相互関係は適している。
【学習到達目標】
都市と港湾の地理学について学習することは,人文地理学の学習内容である人間と環境との相互関係について理解を深めることでもある。地球上の自然環境,人間が関わって築き上げた社会環境の中において,人間がいかに行動してきたか,その歴史と現在の状況について理解することである。それゆえこの授業における学習到達目標は,自然,社会環境と人間との相互関係を,港湾と都市の関係において理解することにほかならない。
【履修上の注意】
テキストを使用するので,その準備をしておくこと。
【事前準備学習】
テキストを事前に読んでおくこと,講義を聴いた後に学んだ内容を整理しておくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『都市と港湾の地理学』 林 上 風媒社 2017 |
参考書 | 『名古屋圏の都市地理学』 林 上 原書房 2016 『現代都市地理学』 林 上 原書房 2012 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 港湾に対する地理学からのアプローチと都市立地 | |
2 | 港湾の発展過程と地理学の学問的発展 | |
3 | 地理学の主要概念を手がかりとする港湾研究 | |
4 | 港湾の地理的環境,港湾活動,港湾立地の条件 | |
5 | 港湾機能の維持のための条件とコンテナ港湾 | |
6 | 単一機能,複合機能,トランシップ機能を果たす港湾 | |
7 | 東アジアのハブ港をめぐる動きと新たなトランシップ | |
8 | 近世以前の水上交通と都市立地 | |
9 | 産業革命の展開と水上交通の近代化 | |
10 | 高速化,コンテナ化する現代の水上交通 | |
11 | 日本の中世における水上交通と都市 | |
12 | 海上交通,河川交通による商品流通 | |
13 | 近世の港町,城下町の水上交通 | |
14 | 近代における港湾建設の経緯 | |
15 | 近代中期における港湾の建設と整備 | |
16 | 定期試験期間 | |