【講義概要】
本講義では、市場メカニズムを中心に営まれる経済において、政府の公共政策が果たすべき役割と意義、ならびにその機能を、厚生経済学、公共経済学、および総合政策論の理論的基礎に立って、体系的な理解を得ることを目的とする。まず、市場が有効に機能する場合には、政府の市場への介入は、非効率性を招くことを説明する。具体的には、財に対する個別物品税の課税や、政府からの財の供給に対する補助金政策、家賃などに対する上限規制、最低賃金規制などの価格の下限規制、事業者に対する参入規制は、いずれも政府の介入のない自由な競争市場での資源配分と比較して非効率性をもたらすことを、余剰分析を用いて説明を行う。次に、政府が保護貿易政策を採用した場合の非効率性について解説する。さらに、自然独占と呼ばれる産業に対する政府の規制政策について説明を行う。こうした産業は、政府の規制がなければ非効率性を免れないもので、公益事業と呼ばれてきた産業である。公益事業分野に於けるさまざまな規制政策について論じ、また近年の規制緩和の流れや国営事業や公営事業の民営化政策についても触れたい。
【学習到達目標】
以下の事柄について正しく理解する。
①政府による公益事業規制の経済的意義
②公的規制のミクロ経済学的分析方法の基礎
③効率性・非効率性の図式的な把握
④市場の失敗に対する政府の是正策の効果の図式的な表現
【履修上の注意】
・講義は1年次のミクロ経済学入門の授業内容の理解を前提とする。
・静穏な授業環境を維持するために座席を指定する。指定された座席に着席すること。
・講義内容をまとめたPower Point スライド資料をCCS上でアップロードして受講者の便宜を図る。受講者はスライド資料をダウンロードしたうえで該当箇所を印刷して、授業時に持参すること。
・毎回授業中に当日の授業内容に関する問題を出すので、授業後、CCSの MinutePaper でその解答を提出していただく。解答提出の締切は、原則として翌週の授業日の前日とする。
【事前準備学習】
・ミクロ経済学入門で学習した授業内容を、十分マスターしておくこと。
・特に需要曲線や供給曲線、消費者余剰や生産者余剰、社会的余剰などの概念を図式的に正しく理解する。
・授業前に、CCSの教材ダウンロードにアップする資料(Power Point スライド)の該当部分を読んでおく。
・授業中に出題した問題の解答を決められた期限までにCCSの Minute Paper に提出する。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 教科書は使用しない。 |
参考書 | 『経済政策 (新経済学ライブラリ 14)』 井堀 利宏 新世社 2003 『ゼミナール現代経済入門』 伊藤 元重 日本経済新聞出版社 2011 『ゼミナール経済政策入門』 岩田 規久男/飯田 泰之 日本経済新聞出版社 2006 |
指定図書 | 『租税・地方財政・マクロ財政政策』 J・E・スティグリッツ著 東洋経済新報社 2004.1 『公共部門・公共支出』 J・E・スティグリッツ著 東洋経済新報社 2003.11 『ゼミナール経済政策入門』 岩田規久男, 飯田泰之著 日本経済新聞社 2006.3 『ゼミナール現代経済入門』 伊藤元重著 日本経済新聞出版社 2011.2 『発送電分離は切り札か : 電力システムの構造改革』 山田光著 日本評論社 2012.5 |
【評価方法】
期末試験 70%
平常点(授業態度、受業時の出題問題への解答、課題の提出を評価) 30%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | プロローグ: 授業予定、講義方針の説明 他 | |
2 | 競争市場と税・補助金政策 | |
3 | 価格の上限規制の非効率性: 家賃規制 | |
4 | 価格の下限規制の非効率性: 最低賃金規制 | |
5 | 保護貿易政策の評価 | |
6 | 市場の失敗と産業政策 | |
7 | 自然独占と規制: 自然独占とは | |
8 | 限界費用価格規制と平均費用価格規制 | |
9 | パレート効率性の条件 | |
10 | 外部性が存在する場合の市場の失敗 | |
11 | 内部非効率問題とインセンティブ規制 | |
12 | 公益事業の規制緩和と民営化 | |
13 | 外部性と市場の失敗 | |
14 | 権利配分とコースの定理 | |
15 | 授業の総括及び講義内容の復習 | |
16 | 定期試験期間 | |