【講義概要】
近現代の規範的政治理論(1)-政治社会における善と正義-
この講義は、近現代における代表的な規範的政治理論を取り上げ、それらが政治社会におけるあるべき根本規範-善と正義-の問題をどのように取り扱ってきたのか分析しながら、学生諸君とともにこの問題を考えてみようとするものである。政治学2とあわせて履修してほしい。政治学1では、まず、近代とはいかなる社会国家であるのかを、学問・政治・経済・社会・理念といったさまざまな視点から分析し、その構造的特徴を明らかにしながら講義の導入とする。次に、形成期近代市民社会の代表的な規範原理であるホッブズとロックの自然権理論を取り上げ、その構造と性格を考察しながら、それがなぜ今日まで人権思想の源泉として大きな影響を保持し続けてきているのかを論ずる。そして、自然権理論に対抗して成立し、現代においてもさまざま評価と批判を受けているベンサムの功利主義の原理(最大多数の最大幸福)を分析し、人権理論との対比を行なう。
なお、この規範的政治理論の講義に関連して、国際政治における価値観(文明)の衝突についても取り上げる。現代文明の基礎は近代西洋文明であるが、それは近代西洋文明が生み出した科学や学問・資本主義・民主主義・自由平等というような形式や価値がかつてのエジプト・アラビア・中国・インド文明等々にはるかに勝る高い普遍性・妥当性を持っているからに他ならない。もちろん近現代西洋文明はいまだ完璧なものではなく、とくに近代西洋文明は過去に数々の失敗を犯した。この過ちを正し、現代文明の普遍性をさらに高めるのが我々の重大な責務である。ところが、この西洋的な価値観に対立・挑戦してくるのが、イスラム圏であり、あるいは中国・ロシア・北朝鮮である。彼らは我々には我々の政治・宗教・伝統があるという言い方を好んでするが、問題はこうした諸国家がその独自の伝統を高め深めて、新しい普遍性を作り出し、それによって近現代西洋文明を乗り越えようとしているとは評価できないことである。ここに現代文明の深い危機が宿る。この問題を文明の普遍性と伝統という観点からも考えてみたい。
【学習到達目標】
国家や社会が成り立つ根本的な規範について原理的にーこの場合は概念を行使してー考えることの意義や面白さを理解してもらうことを目的としている。物事を原理的かつ論理的に思考する習慣や能力を養ってもらえればと思う。
【事前準備学習】
テキストには一応目を通しておくこと。また広く哲学・文学・歴史などの古典に親しみ、新聞やニュースはよくチェックし、知見や教養を高めておくこと。基礎的な知識・思考力が不足していると、授業を理解できないし、興味もわかないであろう。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『西洋政治理論史』 藤原保信 早稲田大学出版部 1985 『20世紀の政治理論』 藤原保信 岩波書店 1991 『西洋政治理論史』 藤原・飯島編 新評論 1995 |
参考書 | -参考書は、登録されていません。- |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
小テスト30%、平常点20%、期末試験50%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 講義の目的 | |
2 | 近現代の構造-学問の視点から- | |
3 | 近現代の構造-政治・経済の視点から- | |
4 | 近現代の構造-理念の視点から- | |
5 | 伝統的自然法思想-T・アクィナスを中心に- | |
6 | 近代的自然権思想-ホッブズとロックを中心に- | |
7 | 伝統と近代の国家観 | |
8 | 伝統的自然法と近代自然権思想の連関と差異 | |
9 | 自然権思想の意義と影響 | |
10 | 自然権思想の意義と影響-実証主義と対比して- | |
11 | 功利主義の登場 | |
12 | 功利主義の理論-ベンサムを中心に- | |
13 | 功利主義の意義と問題 | |
14 | 人権思想と功利主義 | |
15 | 授業の総括 | |
16 | 定期試験期間 | |