【講義概要】
中国の目覚しい経済発展は同時に深刻な環境汚染をも引き起こしている。PM2.5に代表されるように中国の大気汚染は、連日、日本の新聞等で取り上げられている。大気だけでなく、水質・土壌の複合汚染は中国産輸入食品にも危機が迫っており影響は計り知れない。かつて、日本も「公害列島」と呼ばれた時期もあり、経済発展先進国であると同時に公害先進国でもあった。今後、日本は環境技術を切り札として、「公害大陸」とも称される中国に対して、環境ビジネスも含めた経済協力を、各方面から取り組んでいくべきであろう。
本講義では経済発展は環境破壊なしに遂げられないものかという、問題意識を持ちながら、環境汚染が進む中国の社会背景を探り、環境破壊の現状と課題を理解する。
中国の環境汚染が人命や健康、生活に直接関わる深刻な問題となっていることは、中国政府が一番知っていることであり、国際的な環境汚染の広がりに対して中国政府の担う役割は大きい。その環境問題に対する政府の体制・法制度・政策の実態を各種先行研究により深め、日本として、越境汚染化しつつある中国環境問題を隣国である韓国を含めて「環境共同体としての日中韓」の民間協力体制が築けないものかを模索する。
以上から、日本企業による中国でのビジネスはこれから大きく進展していくことが予想される。日本製品の信頼性は中国では非常に高い。工業用製品、電化製品、時計にカメラや食料品、マスクから紙おむつ、粉ミルク等々。特に水不足に悩む中国では水に対する関心が非常に高い。そうした中国で、日本企業は環境ビジネスを、どのように捉え、また、展開していくべきかの問題点と課題を考える。
【学習到達目標】
環境問題は一国だけの問題ではなく、国際協力が必要だという視点を養う。大国の中国は、国境を接する国が多く、国境を接しなくとも、大気や海洋は世界につながり、環境汚染が国内問題では済まされない。
その上で、「公害列島」と呼ばれたことのある、日本の役割は何か、何が出来るのかビジネスを含んだ民間交流を考える。
中国は莫大な資源やエネルギーを消費しており、この観点からも、中国は日本民間企業の省エネ・省資源対策を見習う意義は大きい。鉱物資源の豊富な中国は工業・民生とも化石燃料の石炭に大きく依存しており、総合エネルギー対策が必要なことを理解するとともに、私たちの食生活への影響も考察する。
【履修上の注意】
受講にあたっては、日本と中国の政治経済の違いの把握に努める。その為には日頃から、中国台頭の世界的潮流と改革開放政策がどのように進んだか等の、中国を取り巻く情報(TV.ネット、新聞、雑誌など)収集を心がける。
例えば
1,中国の改革開放政策の展開過程において、中国国内企業や農業がどのように発展・変化してきたか。また、その過程で進出した日本企業の環境規制はどうであったか。日本の環境基準との比較も視野に入れて把握し、今後の潮流をつかむ。
2,進出した日系企業が、現地でどのような課題に直面し、現地社員がその解決に向けて、具体的に日夜どのような努力をしているのかの認識を深める。
3,中国情報は偏った情報が入りがちなので、多面的な見方が必要であり、興味のある問題をひとつ取り上げ根本から考える工夫をする。
【事前準備学習】
教科書の予習だけではなく、、中国を取り巻く情報(TV.ネット、新聞、雑誌など)収集とその問題が何が原因で発生しているのかを考え、教室で議論できるように心がけて欲しい。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『『中国の環境問題と日本企業取り組みへの展望』』 庵原孝文 昭和印刷 2011 『中国の環境問題と日本企業取り組みへの展望』 は中国の環境汚染の報道がメインだが、、高度経済成長を成し遂げた現在はもっと深刻であり、その都度資料を配布し教科書を補う。 |
参考書 | 『『PM2.5「越境汚染」』』 沈才 彬 角川SSC新書 2014 『『中国汚染「公害大陸」の環境報告』』 相川 泰 ソフトバンク新書 2008 『『日中食品汚染』』 高橋五郎 文藝春秋 2014 『『四大公害病』』 政野淳子 中公新書 2013 『四大公害病』は日本である。公害では、中国より日本が先進国であり、日本の公害問題は中国の環境汚染の原因や解決策を考える上で非常に参考になる。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
評価レポート,出席率,学習態度等を総合的に判断して,成績の評価を行う。
出席回数が講義全体の2/3 以上であることを要求する。
筆記試験・・・70点、平常点・・・・30点 受講態度等
テスト持込可:教科書、自筆ノート、配布資料(ファイルに閉じておくこと)。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 1講 : プロローグ | |
2 | 2講 :中国環境汚染の現状と課題 | |
3 | 3講 :大気、水質、土壌汚染と水不足 | |
4 | 4講 :砂漠化と黄砂の功罪 | |
5 | 5講 :農業と食の安全 | |
6 | 6講 :開発と生態環境 | |
7 | 7講 :環境行政(環境行政の体制) | |
8 | 8講 :環境行政(環境保護に関する法制度と政府の環境目標) | |
9 | 9講 :環境政策(環境と誌建設) | |
10 | 10講 :環境政策(循環型社会形成への取り組みと課題) | |
11 | 11講 :環境政策(環境エネルギー戦略) | |
12 | 12講 :日中韓環境協力の動向と展望 | |
13 | 13講 :日本企業の中国環境ビジネスへの取り組みと留意点 | |
14 | 14講 :中国環境ビジネスの新動向 | |
15 | 15講 :授業の総括(研究課題提起) | |
16 | 16講 :筆記試験 | |