【講義概要】
近年、非正規雇用や賃金の性別間格差、解雇規制や定年延長など挙げるときりがないほどに様々な労働の問題が新聞やニュースをにぎわせています。労働問題が話題となるたびに、あるべき雇用政策や法制度についても議論が行われ、雇用政策の変更も盛んにおこなわれています。このようなことが起こるのは、高度経済成長期に合わせてつくられた雇用政策や法制度が、バブルが崩壊して不景気を経験した日本の経済の現状にマッチせず機能しなくなっていることも一つの要因と考えられます。
本講義では現在浮き彫りになっている労働問題を経済学と法律の両面から解説し、それらを理解することを目的とします。まずは経済学と法学の間で意見が分かれやいテーマである解雇規制について法と経済の両面から解説します。これにより世間における労働問題に対する意見の対立の様子が理解しやすくなり、労働問題について法と経済の両面から見ることの重要性を理解できます。 その後は採用・賃金・残業・労働組合などについてそれぞれの立場からの理解を深めることを目的とします。これらのテーマは多種多様な見方があり、意見が分かれることがほとんどです。学生にも議論に参加してもらうことにより、労働問題を深く理解してもらいます。労働問題は現在も新たな課題がどんどん出てくるテーマです。この講義を学んだ後に、まったく新しい労働問題が出てきたとしても、学生自身で要点を見つけ理解できることになることが最終目的です。
本講義では本学経済学部のディプロマポリシーにある知識・技能に関する1~3の項目すべてが広く求められます。これらを講義を履修することにより習得していくことが望ましい。また、思考力・判断力・表現力に関する項目2、労働問題に関する政治・法律分野と経済学の繋がりを理解することが特に求められます。また、項目4についても日々出現する新たな労働問題の理解を通じて習得してもらいます。本講義はカリキュラム・ポリシーにある「展開科目」にあたり、意見の対立する労働問題について自らの意見を発表するレポート課題を通じて、受講生の主体的な学習が求められます。
【学習到達目標】
労働に関するさまざまな問題を経済学の考え方を用いて考察できるようになること。現在や将来の日本における労働市場の問題点を理解できるようになること。
【履修上の注意】
本講義は「労働経済学入門」の上級科目であるので、履修しておくことが必須である。
また、雇用に関する時事問題にも触れることがあるので、新聞を読むなどして現実の労働問題に対する興味・関心を持っておくことが望ましい。
【事前準備学習】
労働経済学入門・ミクロ経済学入門・マクロ経済学入門・データ表現技法の知識を身に付けていることが望まれるので、復習しておくこと。 また、講義中の議論に参加するために、参考書である大内伸哉・川口大司著「法と経済で読みとく雇用の世界(新版)」をあらかじめ読んで理解しておくことが望ましい。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | -教科書は、登録されていません。- |
参考書 | 『法と経済で読みとく雇用の世界(新版)』 大内伸哉・川口大司 有斐閣 2014 『労働経済学』 大森義明 日本評論社 2008 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
期末試験:50% 平常点:20% レポート等課題:30%
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 雇用に関する法と経済学 | |
2 | 解雇の種類と解雇規制 | |
3 | 高度経済成長からバブルの崩壊:終身雇用と雇用の流動化 | |
4 | 企業の労働需要と雇用量の調整 | |
5 | 解雇に関する金銭解決 | |
6 | 解雇規制のまとめ | |
7 | ホワイトカラーエグセンプション | |
8 | 最低賃金:法学的視点と経済学的視点 | |
9 | 最低賃金に関する実証研究 | |
10 | 日本の不平等 | |
11 | 日本の貧困と所得再分配 | |
12 | 非正社員と正社員 | |
13 | 派遣労働者:禁止から保護へ | |
14 | 労働者という性質 | |
15 | これからの雇用政策を考える | |
16 | 定期試験期間 | |