【講義概要】
「金融は経済の血液」とすれば、「ものづくりは経済の骨格・筋肉」にあたる。骨格・筋肉がしっかりしないと、金融やサービスも本来の機能が生かせない。産業経済がどんなに発展しても、また高度化すればするほど、それを基盤的に支える「ものづくり」の重要性は高まりこそすれ低下することはない。
本講義ではまず、ものづくりとは何か、人間および社会にとってどのような意味を持つのかを考えてみたい。ものづくりを担うのは人間であるが、それを直接支えるのは技術と技能であり、間接的に支える科学の役割も重要で、ものづくりを支えるこれらの基本的要素を明らかにする。
ものづくりの主要な場は「工場」であるが、その概観も中身も大きな変化を遂げて現代に至っている。家内生産から工場制へ、さらに手工業から機械制大工業へ、工場の規模も小規模な町工場から製鉄所や化学コンビナートなどの大工場へ、と変化して来た。そうした工場の歴史的発展と変遷に注目したい。さらに、グローバルな視点からみると、「世界の工場」は英国からアメリカへ、そして日本へと移ってきたが、今や日本から中国へと移ってきている。
「世界の工場」が中国へシフトするなか、日本のものづくりはどのような状況にあるのか、どのような方向に進んでいくのであろうか。本講義では、ものづくりの原点にも立ち返り、最前線の動向をも見据えつつ、日本のあるべき方向を提示したい。
ポスト工業社会といわれるが、そこでの製造業の役割と位置を明らかにしておく必要がある。「脱工業社会」など製造業不要論もみられるが、製造業を抜きにして一国経済は成り立たない。製造業は今や情報技術の塊であり、ナノテクノロジーなど先端技術が試行され応用される実験工場ともなっている。創造的な研究や技術開発、高度な技術やノウハウなども、ものづくりの技術と技能に支えられ、それとの濃密な交流のなかで可能となるものである。また、農業と工業の融合化が進みつつあるなか、ものづくり産業を農林水産業を視野に入れた包括的な視点が大切になってきている。
以上のような視点をふまえ、他大学にも比類のない創意的な講義を披露したい。
【学習到達目標】
ものづくりとは何か、人間および社会、そして日本経済にとってどのような意味を持つのかを理解する。ものづくりを担う「工場」は今や様々な技術やノウハウ、文化の塊であるが、そうした工場の最新像をふまえ、さらに歴史的にどのように変遷してきたかを掴む。「ものづくり大国」日本の今後のあり方についても考える問題意識を育てたい。
【履修上の注意】
授業では、教科書を軸にして、講義レジュメおよび各種資料も配布し、わかりやすく体系的に進める。
【事前準備学習】
まず、教科書を揃えておく。講義で示した論点・視点をふまえ、次回までに講義レジメと教科書を読み直し理解を深める。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | -教科書は、登録されていません。- |
参考書 | 『ひと・まち・ものづくりの経済学』 十名直喜 著 法律文化社 2012年 『地域創生の産業システム』 十名直喜 編著 水曜社 2015年 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | ものづくり経済論への招待 | |
2 | 生産と労働 | |
3 | ものづくりとは何か | |
4 | ものづくりと科学・技術 | |
5 | 人間の技とシステム | |
6 | デジタル時代のひとづくり・ものづくり | |
7 | 現場と人材育成 | |
8 | 現代の熟練と技能継承 | |
9 | 工場の経済学 | |
10 | 工場法と人間発達 | |
11 | 日本のものづくりシステム | |
12 | 環境文化革命とものづくり | |
13 | ポスト工業社会とものづくり | |
14 | ものづくりとサービス・文化 | |
15 | 総括と課題 | |
16 | 学期末試験 | |