【講義概要】
租税法は公法であり、民法などと同様に国民生活に大きな影響を与える法である。
税金は、毎日の生活に必要な食料品、ノート、テキスト、通勤に利用する鉄道バスの運賃等に課される消費税を始め、サラリーマンのサラリーに対する給与所得の源泉所得課税、不動産の売買に伴い、売り主、買い主に課される譲渡所得税、不動産取得税、契約印紙税などがあり、これらの税金はどのような法律であり、その内容はどうなっているかを学習が租税法である。
税金は、税法の知識がないことを理由に課税関係を逃れることはできないものであり、国民は自ら税法を学ぶことにより、税法の負担の予測可能性を前もって知ることが求められている。
税金はあらゆる経済活動に負担が伴いよう規定されているので、条文が難解であるため、税法の規定は国民から遠い存在となっている。
本講座では、これらの税金がどのような体系であり、その基本法(国税通則法)、税金の負担を課す個別税法がどのような法律構成(納税義務の内容)となっているか。税法による税金の負担は一定の要件に該当すると強制される根拠等を学習するものである。
学習の結果、賢い納税者と税法が国民のためのものであることを理解することも併せて学習する。
【学習到達目標】
税金の確定方法には、①申告納税制度、②賦課課税制度、③自動確定制度の3つの方法があり、多くの税金は法律で定められた課税要件に該当すると自ら所得金額(課税標準)や税額を計算し納税する「申告納税方式」を採用している。
この制度は、納税者が法律で定められている課税要件を理解した上で、課税要件に該当する否か、納税者自ら判断することとなっており、誤って申告し場合の責任は、納税者が負うこととなっている。
本講座では、申告納税制度の基礎理論と課税標準の計算方法(実体法)、申告手続き、誤った場合の手続き、不服申立制度等を学習する。
【履修上の注意】
税法は、行政法ではあるが、実態社会のあらゆる経済活動を対象とし、法令に規定されている所得、経済取引、法律行為等に該当すると課税の対象となる。
そこで、①一般社会の経済的活動の基礎である商行為(商法・会社法)、法律行為(契約・相続・贈与=民法)についても理解をすると効果的に理解しやすい。さらに、②税金の計算は、数学的判断(金額計算)を要するので、会計(簿記論、会計学)的知識があるとさらに理解が早い。
これらの基礎科目についても積極的に学習をすることを進めます。
【事前準備学習】
講義は、出来るだけ社会の事例からヒントを得て、学習が出来るよう、税金の対象となる実態社会の経済活動をもとに、課税要件等を示しつつ学習をするので、社会の仕組み、例えば商取引形態、相続(民法)が理解できないと、どこに課税されるのかが判らなくなりますので、学習する部分を事前に一読すること。
また、社会で起きている経済取引がなぜ、税が課税されるのかの問題意識をもつこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『税法入門』 金子・清永・宮谷・畠山 有斐閣 2016 本年のテキストは、持ち運べ、移動時間でも学習できるようにコンパクトなものとしました。
必要に応じて、プリントを使用する。
|
参考書 | 『現代税法入門塾(8版)』 石村耕治・加藤義幸他共著 清文社 2016 『よくわかる税法入門(10版)』 三木義一編 有斐閣 2016 『税法基本講義(第5版)』 谷口勢津夫 弘文堂 2016 『租税法(21版)』 金子宏 弘文堂 2016 石村耕治編著『現代税法入門塾』は講師加藤も著者として参加した実務と理論の結合本
三木義一の『よくわかる税法入門』は、入門書、税の問題を対話形式により解説本
谷口勢津夫『税金基本講義』は、租税法の理論家谷口教授の基礎的解釈を論じ、ロースクールへ進学する者の参考書
金子宏『租税法』は我国の租税に関するスタンダートテキスト、租税の辞書と租税法の書籍の一覧表して活用できる |
指定図書 | 『税金のすべてがわかる現代税法入門塾 第8版』 石村耕治編 清文社 2016.4 『よくわかる税法入門 第11版』 三木義一編著 有斐閣 2017.4 『税法基本講義 第5版』 谷口勢津夫著 弘文堂 2016.1 |
【評価方法】
期末試験またはレポートにより60点、授業中に簡単な小テストを実施し、平常点40点、その合計を持って評価する。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 1:ガイダンス、税法って法律ですか。税法学と隣接法学等 | |
2 | 2: 租税の法的定義と課税対象と税金計算のルール | |
3 | 3: 納税義務者とは(租税負担者と税を納める者) | |
4 | 4: 租税法の基本原則 公平性の原則等と租税法律主義 | |
5 | 5:租税実体法を学ぶ 所得税のしくみ どのような所得が課税されるか・10種類の所得の区分 | |
6 | 6:所得税の所得の計算方法 収入金額の計算方法、必要経費論:実額と概算費控除 | |
7 | 7:所得控除と税額控除、損益通算、平均課税方式 | |
8 | 8: 確定申告の方法と手続き | |
9 | 9:消費税のしくみ 納税義務者はだれか、消費税の具体的計算 | |
10 | 10:売上に係る消費税から仕入税額控除=申告納税消費税、申告納税時期は何時か | |
11 | 11:相続税と贈与税のしくみ 財産移転税と遺産税、相続税の補完税の贈与税、相続税の計算方法と申告納税 | |
12 | 12: 財産評価 相続財産はどう評価するのか、時価と評価価額 | |
13 | 13:申告後の諸手続(修正申告、更正の請求、更正・決定、加算税) | |
14 | 14:税務調査(質問検査権)納税者の権利保護 | |
15 | 15:納税者の救済(不服申立と税務訴訟) | |
16 | 16:定期試験期間 | |