【講義概要】
厳しい歴史をくぐり抜け、人々が協力・連帯してゆくためには、彼らに対する指針・生活規範・結束の重要さなどを伝えるものがなければならない。なにをしてもよい、好き勝手にやれということなら、まとまりも、けじめも、他者への思いやりも、ともに明日を建設するエネルギーも培われない。「豊かな今」は何世代も前の人々の働きと、努力と、祈るような思いの中で与えられた。「輝く明日」はただ漫然と時を過ごすだけでは訪れない。
聖書の民たちもそのことは知っていた。自らがくずれおち、諦め、自暴自棄になることから何も生まれないことを知っていた。逆境の歴史は彼らに多くの教訓を残し、それとともに、迫害の歴史はお互いの協力・連帯の大事さ、そして「遅れるもの、弱いもの、悲しむもの」をも取り込んで、ともに生きることの重要性をも教える。
神に造られた「被造物」の、この世での歩みの隣には「悲しみ、苦しみ、痛み」などがひそんでいる。それらをかかえつつ聖書の民たちは生きた。そしてその生き方は私たちに多くの事を問いかけ、また、生きるヒントももたらしてくれる。それ故、この科目では、聖書及び聖書をもって生きた人たちの言行に迫ろうと思う。それは 「いのち」「人格」などが軽んぜられやすい現代に生きる私たちの「今」を見つめ、点検させ、より良い明日への実現へと向かわせるエネルギーをもっているからである。
とりわけ、イエスの言行、イエスのまなざしに焦点を懸命にあてて、半年間、講じましょう。どうぞ、自らの人生を有意義なものとしたい人はイエスとの触れ合いの中で成長ください。
【学習到達目標】
豊かな人間形成と、利他愛の獲得、いかなるときにも希望を失わず、生きるのだとの不屈さの養いを目指す。
【履修上の注意】
よく学び、よく考え、よく生きようとする姿勢で、受講してもらいたい。他の存在に気配りできるような誠実さをもって講義に取り組んでもらいたい。
【事前準備学習】
シラバスを見て、担当者が掲げる人物たちの事績、考えなどに関する書物を読んでもらいたい。本学の図書館は充実しているので、図書館司書に相談して、アドバイスを受けて、紹介された書物類を読むのも良い。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『旧・新約聖書(新共同訳)』 日本聖書協会 講義の中で、そのほか、プリントされた資料を配布。 |
参考書 | 『田中正造』 林竹二 筑摩書房 1985年 『巌本善治』 葛井義憲 朝日出版社 2005年 『大正デモクラシー・天皇制・キリスト教』 富阪キリスト教センター 新教出版社 2001年 『闇を照らした人々』 葛井義憲 新教出版社 1992年 『羽仁もと子』 斎藤道子 ドメス出版 1988年 『風の旅人』 葛井康子・義憲 朝日出版社 2009年 『岩波キリスト教辞典』 岩波書店編集部 岩波書店 2002年 受講生のみなさんに読んでもらいたい書物類は沢山あります。講義の中で、その都度、紹介します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
試験50% 平常点50%( 授業態度10% 課題30% チャペル参加10%)
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 破れだらけの人間と愛のいのちの源 | |
2 | 1人だけで生きられるの | |
3 | 種々のいのちに囲まれて、「生も死も」 | |
4 | 生きがいについて | |
5 | 温かなまなざし | |
6 | 誰かのために必要とされたい | |
7 | 哀しみを見つめて | |
8 | 聖書に生きる田中正造 | |
9 | 聖書をもって公害に向かう | |
10 | 「遅れるもの、弱いもの、悲しむもの」とともに | |
11 | 濃尾地震と滝乃川学園 | |
12 | 巌本善治と石井亮一 | |
13 | 相馬黒光と巌本善治 | |
14 | 羽仁もと子の軌跡 | |
15 | 羽仁もと子と婦人之友 | |
16 | 講義の総括、定期試験 | |