【講義概要】
資本主義市場は経済的目的にもとづく単なる取引の場ではなく,社会,文化,政治など広い意味での制度的要因の影響を受けた経済主体が取引を行う空間である。社会が豊かになるとサービス的要素のウエートが高まり,経済と文化が結びついたビジネスが現れてくる。また,環境,景観,NPOなどこれまで市場の外にあると考えられてきたテーマが浮上し,消費者意識に影響を与える。消費者の背後にある社会全体にとってもっとも望ましい財やサービスを供給するという役目を担う企業は,社会的消費市場の動向に注目せざるをえない。
ポストフォーディズムへの移行という大きなうねりに冷戦後の新興諸国の台頭が加わり,先進諸国の労働市場は分裂化の様相を呈している。新自由主義の経済政策や規制緩和が追い討ちをかけ,労働市場における「市場の失敗」やミスマッチが各地で生じている。キャッチアップされる側の先進諸国では,これまで以上に高レベルの技術革新が求められている。技術革新というと生産技術や生産方法の革新というイメージが強いが,企業組織や流通・販売方法などの革新もこの中に含まれる。
交通・通信,工業生産,商業・サービス業も,近年,大きな変化を見せている。交通手段の多様化や連続的で柔軟な交通システムの出現にともない,経済活動の仕組みが大きく変わろうとしている。これまで「距離の科学」といわれてきた地理学にとって,交通・通信の目覚ましい発展は,距離以外の要素を考えさせるきっかけになった。交通・通信の発展が工業生産や商業・サービス業の立地に影響を与えることはいまさらいうまでもない。近年のグローバル化は,スケールの広がりにおいてこれまでとは大きく異なる。
こうした点を踏まえながら,本講義では都市と経済の関わりを中心にグローバル社会について考えてみたい。
【学習到達目標】
地理学を学ぶのは,われわれが生活している社会や経済の仕組みを地域や空間の視点から理解し,その成り立ちを知ることにある。こうした能力を養うには,まず人文活動の歴史的発展と現状に関する知識を習得する必要がある。そのうえで,習得した知識をもとに,望ましい社会や経済のあり方につて考える。グローバル時代における人文社会についての知識と応用力を獲得することが,この科目の学習到達目標である。
【履修上の注意】
テキストを使用するので,必ず手に入れて講義にのぞむこと。
【事前準備学習】
テキストを事前によく読んでおくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『都市と経済の地理学』 林 上 原書房 2014 |
参考書 | 『現代都市地理学』 林 上 原書房 2012 『現代社会の経済地理学』 林 上 原書房 2010 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 卸売業・小売業の変化と商業地域 | |
2 | 多様化・専門化するサービス業 | |
3 | 企業サービス業の台頭とサービス業立地 | |
4 | 社会的消費者と消費空間の拡大 | |
5 | ブランド・テーマパーク・情報の消費 | |
6 | モノやサービスを消費する空間の多様性 | |
7 | 公的経済活動と租税・財政の問題 | |
8 | 国家の経済政策と貿易交渉 | |
9 | 行政府の地域経済・都市計画への関与 | |
10 | 都市における企業集積とメリット | |
11 | 都市システムと都市立地・大都市圏 | |
12 | 地球システムの中の都市システム | |
13 | 経済地理学と制度論的経済学 | |
14 | 市場取引と制度的技術革新 | |
15 | グローバル・バリューチェーン | |
16 | 定期試験期間 | |