【講義概要】
フランスの19世紀後半を代表する作家のひとり、エミール・ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』(翻訳藤原書店刊)を中心に読みながら文学と社会の関係、テキストとテキストの描くフランス19世紀の時代について考える。
パリへと上京した婦人服販売員のドゥニーズのシンデレラストーリーでもある『ボヌール・デ・ダム百貨店』は、現在のデパートの原型となった実際の百貨店をモデルにしている。19世紀フランスの社会的な状況や、万国博覧会を契機とする「まなざし」の変化など、デパートが誕生する時代背景を追いながら、人々の欲望とそれを生みだす「装置」としてのデパートを舞台にした物語を読む。
限られた講義時間でテクスト全てを扱うことはできないので、ドゥニーズ姉弟がパリに到着する第一章とデパートの内情が描かれる第二章を中心に見ていく。
『ボヌール・デ・ダム百貨店』の他にも同時代のパリを舞台にしたゾラやバルザックのテキストについても言及する。
【学習到達目標】
⒈ 19世紀のフランスを舞台にした文学作品のひとつを味わい、作品を深く読むおもしろさを知る。
⒉ 19世紀のフランス社会と私たちの生きる今日の社会との関連性や共通点を理解する。
⒊ フランスと日本の人々や文化の相違点や共通点を理解する。
【履修上の注意】
⒈ 意欲を持って授業に参加する。
⒉ 授業の感想や疑問点、また授業中に見た映像の感想などをコメントシートに記入し、毎回授業後に提出する。
【事前準備学習】
1. 授業で扱う箇所をあらかじめ読んでくること。
2. 授業中に疑問に思ったこと、関心を持ったことがらについて掘り下げ、図書館やインターネットなどで調べる。
3. 授業中に配布したプリントやテキストなどを、普段からよく見直しておくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『デパートを発明した夫婦』 鹿島茂 講談社(講談社現代新書) 1991 ISBN 978-4061490765
821円 |
参考書 | -参考書は、登録されていません。- |
指定図書 | 『デパートを発明した夫婦』 鹿島茂著 講談社 1991.11 『ボヌール・デ・ダム百貨店 : デパートの誕生(ゾラ・セレクション:5』 [ゾラ著] ; 吉田典子訳・解説 藤原書店 2004.2 『パリの街並みと暮らし : 知られざる魅力』 マリー・ル・ゴアジウ著 ; リズ・エルツォーグ絵 ; 前島美知子訳 西村書店 2013.10 |
【評価方法】
定期試験50%、中間レポート30%、コメントシートや授業の参加態度を含め総合的に評価
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | ガイダンス 作者と作品のあらまし | |
2 | ゾラの生涯と19世紀のフランス1 歴史と時代背景 | |
3 | ゾラの生涯と19世紀のフランス2 パサージュと万国博覧会 | |
4 | デパートの誕生と「ボンマルシェ」 | |
5 | 主人公ドゥニーズ、パリへと | |
6 | 経営者ムーレと人物像 経営の哲学 | |
7 | 女性の欲望を生み出す「装置」としてのデパート | |
8 | 拡張を繰り返すボヌール・デ・ダム百貨店と拡張するパリ | |
9 | デパート定員の生活1 週末と恋愛 | |
10 | デパート店員の生活2 家族生活と仕事 | |
11 | デパートの発展と社会の発展 | |
12 | ドゥニーズのサクセスストーリー/シンデレラストーリーとしての『ボヌール・デ・ダム百貨店』 | |
13 | シンデレラストーリーの原型 ペロー『サンドリヨン』/『ロバの皮』 | |
14 | 同時代の他作品にみるパリ ゾラ『パリの胃袋』/バルザック『毬打つ猫の店』 | |
15 | まとめ すべてを金で買えるか。買えないものはあるか。 | |
16 | 定期試験期間 | |