【講義概要】
テレビや新聞などでしばしば倒産のニュースが報じられるが、その際「破産」、「民事再生」といった法律用語が使われる。倒産は債務者が経済的に破綻したことをいうが、その場合、多数存在する利害関係人との間を包括的に処理することが必要になる。そのための制度が倒産処理手続と呼ばれるものであり、破産や民事再生はその代表的なものである。倒産処理手続を規律する法律は倒産法又は倒産処理法と名付けられているが、それは破産法、民事再生法といった個別の法律の総称であり、倒産法という個別の法律が存在するわけではない。現在、倒産法は重要な法分野となっている。この講義はこの倒産法を対象とするが、時間的な制約のため、最も古い歴史を持ち、しかも倒産処理手続全体の中核的な存在でもある破産手続を主に取り上げ、その手続の基礎を解説する。
【学習到達目標】
・社会において倒産状態がどのように処理されるかを知る。
・倒産処理手続としてどのようなものがあり、それぞれどのような特色があるかを理解する。
・倒産処理手続のうち最も歴史が古く、重要性も高い破産手続を例に、それがどのように処理されているか、その概要を理解する。
・破産手続の中で、債務者がどのように取扱われているか、債権者などの利害関係人及びその権利がどのように処遇されているかを知る。
・以上を通して、社会人として倒産という事態に適切に対処するために必要な基礎的専門知識を身に付ける。
【履修上の注意】
この講義では資料等は用いない。ただし、単元ごとにウェブでまとめのレジュメを配信するので、各自ダウンロードして利用されたい。
当然のことながら、毎回、六法は忘れずに持参されたい。
受講者数等にもよるが、講義にあたっては出席をとることを予定している。その場合でも、出欠で合否を決定したり、出席したことだけで加点したりすることはないので注意されたい。そもそも手続法は、その性質上、出席を怠るとその後の授業内容の理解が著しく困難になるので、その意味でも授業には欠かさず出席するように心掛けられたい。
【事前準備学習】
授業前に教科書等の該当部分を自習したうえで授業を受けることが望ましいが、これから倒産法を学んでいく諸君には困難が多いと思われる。従って、予習は必須ではない。しかし、授業終了後、教科書や参考書又はウェブで配信されたレジュメを利用して、授業内容を確認し理解していくという作業は可能であり、有効であると考えられる。是非励行されたい。
テレビや新聞で報道される倒産に関する記事に日頃から注意し、関心を持つようにすることも有用である。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『現代倒産手続法』 中島弘雅・佐藤鉄男 有斐閣アルマ 2013年 学習の便宜を考えて教科書を指定するが、必ずしも強制しない。授業開始後必要を感じたときに購入すればよい。参考書に挙げた書籍のうちいずれかで代用してもよい。 |
参考書 | 『倒産処理法入門[第4版]』 山本 和彦 有斐閣 2012年 『破産法[第6版]』 加藤 哲夫 弘文堂 2012年 『破産法・民事再生法[第3版]』 伊藤 眞 有斐閣 2014年 参考書のうち最初のものは、読み物風にまとめられた入門書である。教科書に挙げたものよりも理解しやすいと思ったときは、これを教科書として使用しても不都合はない。後の二冊は代表的な概説書で比較的読みやすいものである。いずれも法科大学院レベルで、内容は極めて高度であるが、論点等について詳しく調べる際などに有用である。図書館等で参照して利用されたい。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
期末試験を実施し、その結果により評価する。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | はじめに ~倒産処理の必要性~ | |
2 | 私的整理 〜私的整理とその限界〜 | |
3 | 法的倒産処理手続の種類と特色 | |
4 | 破産手続開始原因 | |
5 | 破産手続の開始とその效果 | |
6 | 破産手続開始が破産者の財産関係に及ぼす効果 | |
7 | 破産財団 〜財団所属財産と自由財産〜 | |
8 | 破産債権と財団債権 | |
9 | 破産債権の処遇 | |
10 | 別除権 | |
11 | 破産者をめぐる契約関係の処理その1 ~契約関係の原則的な処理方法~ | |
12 | 破産者をめぐる契約関係の処理その2 ~契約関係の特別な処理方法~ | |
13 | 取戻権 | |
14 | 相殺権 | |
15 | 否認権 | |
16 | 定期試験 | |