【講義概要】
人類は,より豊かになるためにさまざまな工夫をしてきた.安定的に食料をはじめとする生活に必要な資源を確保するためにはどうしたらよいか.病気にかからず長寿を全うするためにはどうしたらよいか.当初はそのような基本的なニーズ,そして,現代的な文脈では,発達した科学技術を活用して,生活の質をいかにして向上させるかという課題に取り組んできた.
そうこうして現れたのが,「環境問題」である.
21世紀以降も人類が地球上で生存できるためには,地球温暖化や資源の枯渇,汚染物質の排出といったさまざまな環境問題を克服することが不可欠である.さまざまなデータや証拠を照合すると,それらの環境問題の原因は,より豊かな生活を目指す人類の経済活動にあるようにみえる.
便利な生活,優れた技術を探し求めてきた人類がしてきたこと,していることが,それらを支える根底にある「自然環境」を破壊することにつながるとすると,それは,本末転倒な話である.
さらに,現在においても1日1ドル以下での生活を余儀なくされている貧しい人々は10億人にものぼる.そのような人々にも経済発展する権利はあるはずだ.しかし,既に地球の環境容量はその限界を迎えているようにみえなくもない.さらには,100年後の私達の子孫が住む地球はどのようになっていることだろうか.私達と同じように,経済活動を行うことができるのだろうか.
経済成長する権利を先に行使した先進国と,今からその権利を行使しようとしている国々が存在している.いわゆる先進諸国の消費社会は無限の欲望を生み出し,貧困の改善が必要な開発途上国には経済成長が不可欠である.環境という視点から地球という星を眺めれば,現在の地球の社会・経済システムは矛盾に満ちていると言わざるを得ない.
本講義では,環境と社会・経済との間に存在するトレード・オフの関係に焦点をあてながら,豊かさと環境保全が両立しうる社会・経済システムのあり方について,できる限りグローバルかつ包括的に論じたいと思います.
【学習到達目標】
受講上の到達目標は,現在,地球上で起こっている様々な環境問題と社会・経済がどのように関係しているのかを理解することです.
【履修上の注意】
「環境問題」を考える講義において、私語等の教室環境を乱す行為は論外であり、厳しく対処する(もちろん全ての講義において当然ではあるが、本講義では特に)。
【事前準備学習】
ミクロ経済学入門の内容を復習しておくこと。自分の関心がある環境問題に関する書籍を少なくとも1冊は読んでおいてください。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 適宜資料を配布する |
参考書 | -参考書は、登録されていません。- |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
試験 80 % 平常点 20 % 平常点は出席回数をそのまま最終評価に反映させるものではない.ただ「出席している」だけでは,何の意味もないので注意してください.詳細については初回講義時に指示する
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | イントロダクション(講義概要,成績評価,受講上の注意点の説明) | |
2 | 環境経済学のすすめ | |
3 | 環境経済学の基礎理論‐外部不経済と市場の失敗 | |
4 | 環境経済学の基礎理論‐囚人のジレンマと共有地の悲劇 | |
5 | 日本の公害問題 | |
6 | データからみる環境と経済の関係性‐環境クズネッツ仮説 | |
7 | 地球温暖化の経済学-科学的根拠と対策 | |
8 | 地球温暖化の経済学-京都議定書とその後 | |
9 | 原子力発電の経済学 | |
10 | 環境問題と貧困問題 | |
11 | 福祉水準の測定-GDPを超えて | |
12 | 持続可能な発展論 | |
13 | 持続可能性、世代間衡平の倫理、将来の割引 | |
14 | 持続可能性の計測 | |
15 | われら共通の未来-まとめ | |
16 | 定期試験期間 | |