【講義概要】
近現代は神が「隠れた」ことを一層実感させ、神の「無力化」、神の「なぞ」を一層きわだたせてしまった。ただ、旧約聖書にもしばしば示されるように、神は触れることも、見ることも、探し出して、見つけ出すこともできないものとの捉え方は古より「聖書の民たち」には納得できるものであった。それ故、近現代人はこのことについてなぜそんなに「大騒ぎする」のか分からないという見方が生じるのも不思議なことではない。
しかし、そうは言っても、近現代は客観性、実証性を重んじる時代である。そしてそれは「神探し」にも向けられた。だが、そこで神の「創造の神秘、痕跡」にうたれても、神を見つけ出すことはできなかった。次第に、人々は神を遠ざける、別の表現をすれば「消して」しまうことになった。そして、もう、神を中心にしなくても、神の教えや、力に頼らなくても、人間は自足できる。人間は自分を中心に、世界を、社会を、自ら以外のものを分析、解明、また、支配できる。人間は今、神に代わって、「神」なることができたと。高らかな「人間賛美」の声が、この地球上であふれている。
こうした事態のもとで、私たちは聖書を基盤にしつつ、人間の生き方、あり方、明日への歩みなどを、本講で見つめることにする。そして、聖書とともに、聖書の世界で生きた種々の人々(有島武郎、神谷美恵子、三谷隆正、遠藤周作など)の軌跡に、心と目と耳などを用いて、全身心で捉えていこうと願っている。
【学習到達目標】
豊かな人間形成と、利他愛の獲得、いかなるときにも希望を失わず、生きるのだとの不屈さの養いを目指す。
【履修上の注意】
よく学び、よく考え、よく生きようとする姿勢で、受講してもらいたい。他の存在に気配りできるような誠実さをもって講義に取り組んでもらいたい。
【事前準備学習】
シラバスを見て、担当者が掲げる人物たちの事績、考えなどに関する書物を読んでもらいたい。沢山の学びの時が備えられている皆さんは充実した本学の図書館を大いに利用してください。また、図書館司書の方々に相談して、アドバイスを受けるのも伸び行くための必要なつとめです。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『旧・新約聖書(新共同訳)』 日本聖書協会 講義の中で、そのほか、プリントされた資料を配布。 |
参考書 | 『風の旅人』 葛井康子・義憲 朝日出版社 2009年 『沈黙(『遠藤周作全集』2所収)』 遠藤周作 新潮社 1999年 『こころの旅』 神谷美恵子 みすず書房 2005年 『有島武郎・姿勢と軌跡』 山田昭夫 右文書院 1979年 『三谷隆正ー人・思想・信仰ー』 三谷隆正 岩波書店 1966年 受講生のみなさんに読んでもらいたい書物類は沢山あります。講義の中で、その都度、紹介します。 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
試験50% 平常点50%( 授業態度10% 課題30% チャペル参加10%)
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 誕生といのちの畏敬 | |
2 | 「無意味、無価値」ではない | |
3 | 「無価値」から解き放たれて | |
4 | かけがえのない自分はいかに生きるか | |
5 | 「隣人」とともに | |
6 | 有島武郎の「神」 | |
7 | 「相対界」に生きる | |
8 | 神谷美恵子の「自己肯定」 | |
9 | 神谷美恵子の「罪の意識」 | |
10 | 神谷美恵子の「我が道」 | |
11 | 三谷隆正の岡山時代 | |
12 | 三谷隆正の「他力信仰」 | |
13 | 遠藤周作とキリスト教 | |
14 | 遠藤周作の『沈黙』 | |
15 | 遠藤周作の人間観・世界観 | |
16 | 講義の総括、定期試験 | |