【講義概要】
WHOによって健康の概念が疾病のない状態のみならず心理的・社会的にも健やかな状態(well being)として定義されて以来、身体的健康に加えて心の健康や社会的健康も健康を包括的に捉える上で重視されるようになった。また、ストレスが健康に及ぼす影響に関する学術的検証が進み、ストレスマネージメントが健康維持・増進に重要な役割を担うことも強調されている。近年は生活習慣病への関心も高まり、健康な生活習慣の形成・実践が疾病の予防や健康の維持・推進において重要なテーマとなっている。
ところが、定期的な運動が健康に良いことは誰もが知っているにも関わらず運動習慣を日常生活に取り入れている人は3割程度に過ぎない(厚生労働省、2008)。このことは、健康に良いとされる知識を持つことが健康な生活習慣を実践することに繋がるという単純な論理では片付けられないことを意味する。それだけでなく、自発的な健康習慣の形成においては個人の健康行動への信念や動機づけが必要であり、その実践における様々な専門的なサポートが必要であることを意味する。
本講義では、疾病の予防や健康の維持・推進における様々な健康心理学的トピックスを取り上げ、健康心理学の基礎知識を学習し、その実践的貢献について理解を深め、自発的な健康習慣の形成には何が必要かについて概観する。
【学習到達目標】
1)健康心理学の基礎知識を身につける。
2)健康心理学の学問的、実践的貢献に関する理解を深める。
3)受講者自身の健康問題やQOL(Quality of Life)について再考し、健康な生活習慣への動機づけを高める。
【履修上の注意】
授業のテーマ毎に関連する社会的トピックスを取り上げ、授業中そのトピックに関する受講者のリアクションペーパーを集める予定であり、期末テストと一緒に成績に反映する。
【事前準備学習】
次回の講義テーマの教科書の該当個所を事前に読んでくること。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | 『新版 健康心理学』 野口京子 金子書房 2006 教科書の資料を用いて授業を進める予定である。 |
参考書 | 『健康行動と健康教育―理論、研究、実践』 Karen Glanz (編) 医学書院 2011 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 健康と健康観:WHOの定義、Stoneの理想説と方向説 | |
2 | 健康心理学台頭の社会的背景と健康心理学の特徴 | |
3 | 健康行動と健康行動モデル | |
4 | 健康と予防:一次的・二次的・三次的予防 | |
5 | ストレスと健康の関連1:生物学的アプローチ | |
6 | ストレスと健康の関連2:心理社会学的アプローチ | |
7 | ストレスと健康の関連3:ストレス対処とソーシャルサポート | |
8 | ストレスと心身症:心身症の定義 | |
9 | 健康とパーソナリティ | |
10 | 疾患とパーソナリティ | |
11 | 生活習慣と健康 | |
12 | 健康教育と実践的取り組み | |
13 | 健康行動のアセスメント | |
14 | 健康カウンセリング:認知行動論中心に | |
15 | 健康な生活習慣の形成 | |
16 | 定期試験期間 | |