【講義概要】
世界史をグローバルヒストリーの視点から再検討し、16世紀以降の世界を一つの世界として捉え、ユーラシア大陸の東と西で大きな変革が行われた点に注目する。ヨーロッパでは資本主義市場経済が成立し、日本でも一定の市場経済を伴う経済社会が形成された。その後のグローバリゼーションを経て、段階的に世界は一つの市場経済体制に編成されていった過程をヨーロッパと日本に注目して検討する。近代資本主義社会の本質を土地から離脱した資本の行動の全面的解放と捉え、資本の行動を国民国家が促進すると同時に公的に規制し、近代的民主主義社会が形成されたと考えられる。
16世紀、資本主義世界経済がヨーロッパを中心に成立し、そのインパクトが日本にも及び東アジアの中華帝国の華夷秩序が崩壊し、日本は中華文明から離脱し独自の発展を開始することになった。信長によって公権力に統合された市場経済システム、近世経済社会によって急速な経済発展を達成することになった。このような近世江戸期の経済社会は、ヨーロッパの同時代の経済構造とは異なっているが、プロト・工業化と呼びうるような発展が見られ、そのような達成を前提として明治以降の産業革命が実現して行ったと考えられている。ひいては戦後の高度成長へつながっていったとも考えられる。日本における16世紀後半から19世紀の経済発展をグローバルヒストリーの視点からヨーロッパと比較して説明し、明治維新を主権国民国家形成の画期である近代革命として理解し、世界史における日本近代の経済発展の特徴を説明する。
【学習到達目標】
西ヨーロッパにおける市場経済の成立と発展過程の概要を理解し、さらに日本の江戸時代以降の経済発展との比較を通じて、資本主義市場経済の基本的特徴と現代資本主義の特徴について理解するように努める。さらに、近世以降のグローバリゼーションの意義について探求し、現代社会を転換期ととらえる世界史認識を共有できるように促す。
【履修上の注意】
毎回アンケートを取り、テーマごとに小テストを行う予定である。講義の予習、基礎学力を養うために自学自習を行ってもらう予定である。
【事前準備学習】
地理上の発見、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスの世界進出について事前に調べておくこと。近世日本の「出島」「対馬」「琉球」「松前」の交易の性格を幕藩体制とアジア、ヨーロッパの関係の中で確認しておくこと。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | プリントを配布する |
参考書 | 『オランダ東インド会社の歴史』 科野浩蔵 同文館 1988年 『オランダ風説書』 科野浩蔵 中公新書 2010年 『流通経済史』 山川出版社 2008年 『日本経済史1』 速水融 岩波書店 1988年 『日本経済史2』 新保博 岩波書店 1988年 講義中に指示する |
指定図書 | 『あなたが歴史と出会うとき : 経済の視点から 新版』 堺憲一著 名古屋大学出版会 2009.3 |
【評価方法】
試験50% 平常点40%(アンケート内容30% 小テスト20%)で評価する。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | 16世紀世界の転換 | |
2 | 日本における近世社会の成立 | |
3 | 江戸時代前期の経済社会 | |
4 | 日本における市場経済の成立 | |
5 | 江戸時代後期の経済社会 | |
6 | 日本における国民国家の成立と明治維新 | |
7 | 日本における産業革命 | |
8 | 日本資本主義の海外進出 | |
9 | 1873年「大不況」と資本主義の構造転換 | |
10 | 資本主義の発展と独占形成 | |
11 | 戦間期の資本主義の動揺 | |
12 | 戦後資本主義の発展とフォーディズム | |
13 | 冷戦の崩壊と世界資本主義の構造転換 | |
14 | 産業資本主義から高度技術情報資本主義への転換 | |
15 | 21世紀世界のゆくえ | |
16 | 定期試験期間 | |