【講義概要】
この講義では、人間がヒト(Homo sapiens)という生物の一種であるという認識のもと、人間の姿かたち(形態)、生理、心理、行動、社会、文化の特徴、すなわち「人間とは何か」を考える。
生物としての人間の本性を探求するには、大きく3つのアプローチがある。まず、現在地球上のさまざまな場所で、さまざまな文化的、社会的、生態的条件のもとで暮らしている人々の研究を通じて、現代人の多様性と共通性を探る方法である。第二のアプローチは、化石や考古学的、地質学的資料を用いて、過去に地球上に生存していた人類の祖先の姿かたちや暮らしぶりを復元し、そこから現代人の来し方を探る方法である。そして第三のアプローチは、現在地球上に生息するヒト以外の生物を研究し、それらとの比較対照を通じてヒトという種の何が他の生物と共通で、何がヒトに固有の性質であるかを探るやり方である。第三のアプローチでは、とくにヒトと近縁な霊長類の社会や生態、心理の研究が有効である。
本講義では、まず人類化石の研究成果と最新の研究動向を紹介しつつ、人類進化の歴史を概観する。ついで、さまざまな霊長類の社会のあり方を紹介し、それらがどのような環境条件や進化的背景に基づくものなのかを考える。そして、自然社会に生きる人々の生活を紹介し、機械や電気に囲まれる以前の、生物としてのヒトの本来の生活とは何かを考える。さらに、3つのアプローチを総合してみえてくる「人間の本性」について解説する。最後に、学んだ内容を踏まえ、人類の今後に思いをはせる。
【学習到達目標】
自己を客観視する能力は、本講義の主題である「人間の本性」のひとつであると同時に、本講義を通じてみなさんに磨きをかけてもらいたい能力のひとつでもあります。「人間とは何か」を探求するための3つのアプローチとその成果に関する知識を身に着け、それらを用いて自己を客観視しつつ、「自分とは何か」を考えられるようになることを目指します。
【履修上の注意】
いっけんよくわからない内容、自分の実生活にはあまり関係ない内容だと感じても、「とりあえず興味をもって」授業に臨んでください。また、教員の講義内容をうのみにせず、自分の頭で納得できるまで考えてください。納得できないことは質問してください。
【事前準備学習】
毎回、次回の講義の簡単な予告をします。予告で示されたキーワードについて簡単にでよいので調べてきてください。講義後は、自分でとったノートや配布資料をもとに、簡単な授業概要を作成しましょう。
【教材】
※指定図書は担当教員が、学生が必読すべきものとして指定する図書のことです。
図書は図書館に置いてあり、1週間借りることができます。(一部貸出不可の図書もあります。)
教科書 | -教科書は、登録されていません。- |
参考書 | 『人類進化論 霊長類学からの展開』 山極寿一 裳華房 2008年 『ヒトの進化七〇〇万年史』 河合信和 筑摩書房 2010年 |
指定図書 | -指定図書は、登録されていません。- |
【評価方法】
平常点(50%)と定期試験(50%)で評価する。平常点は毎回の講義で出す課題によって評価する。定期試験の内容は、知識を問う問題と思考を問う問題それぞれ50%とする。
【講義テーマ】
回数 | テーマ | テーマURL |
1 | ガイダンス; Homo sapiensの分類学上の位置づけ | |
2 | 生物進化の理論 | |
3 | 自然人類学の3つのアプローチ | |
4 | 人類の曙:直立二足歩行 | |
5 | ホモ属の出現:道具使用 | |
6 | 現代人の進化と拡散 | |
7 | 霊長類の社会構造いろいろ | |
8 | 霊長類の社会と食 | |
9 | 霊長類の社会と子殺し | |
10 | 自然社会の人々:平等原則 | |
11 | ヒトらしい心とは? | |
12 | ヒューマン・ユニバーサル(1)向社会性と分業 | |
13 | ヒューマン・ユニバーサル(2)教育と協同育児 | |
14 | ヒューマン・ユニバーサル(3)性と生殖の乖離 | |
15 | 人類のゆくえ | |
16 | 定期試験期間 | |